研究課題
がん間質の主要細胞成分であるがん関連線維芽細胞(CAF)はがんの進展に寄与するとともにがん微小環境を形成している。CAFにおける腫瘍促進性はvitroでも比較的安定に維持されるが、そのメカニズムについては不明である。そこで、私はCAFのエピジェネティック特性およびそのがん進展における意義を解明することを目的とした。胃がん手術検体のがん部及び非がん部より各々CAFおよびnon-CAF(NCAF)を計44組初代培養した。樹立したCAFは免疫蛍光染色によりCytokeratin陰性、CD31陰性、Vimentin陽性、aSMA陽性であり、またがん遺伝子パネルを用いた遺伝子変異解析でがん組織において10%以上の頻度で認められた遺伝子変異はCAFにおいて認められないことを確認した。またCAF培養上清はNCAFと比べ腫瘍増殖および遊走能を促進した。これら12組のCAFおよびNCAFを用い、エピジェネティック変化の内、安定で細胞分化に重要な抑制性ヒストン修飾であるH3K27me3に着目しゲノム網羅的解析を行った。クラスタリング解析・PCAにおいてCAFは明瞭に異なるH3K27me3パターンを示した。そのH3K27me3の低下に伴って発現上昇する標的遺伝子には細胞運動、細胞間伝達に関連し、様々な増殖因子・サイトカインや血管増生因子等の分泌因子が含まれていた。その中でほぼ全てのCAFでNCAFと比べH3K27me3の低下と高発現を示す遺伝子としてWNT5Aを同定した。WNT5Aの高発現はCAFの培養上清及びFFPEサンプルの紡錘形間質細胞においても確認され、CAFの培養上清による細胞増殖促進効果はWNT5Aのアンタゴニストにより抑制された。本研究はCAFにおいてエピジェネティック変化がその生物学的特性を規定していることを示唆するとともにCAF由来の治療標的を同定した。
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