研究実績の概要 |
末期重症心不全における植込型補助人工心臓装着術においては、周術期の出血性合併症や術後遠隔期における出血傾向が認められる症例があり、周術期管理上の問題となっている。その原因として、消費性の血液凝固因子欠乏症が疑われているが、既存研究では明らかになっていない。 本研究においては、周術期における血液凝固因子の動態を明らかにし、その止血機構・創傷治癒過程を把握し、さらに、第XIII因子等の血液凝固因子の補充による出血傾向の改善効果を検討し、有効な止血方法を構築することを目的として研究をすすめている。 昨年度おいては、院内における止血凝固系検査体制の確立を行い、周術期の網羅的な凝固因子の変動の解析が可能となった。 今年度より症例登録を開始し、現在までに当科において人工心臓装着術を施行した14例の患者登録を行った。網羅的な解析から人工心臓の駆動による各種凝固因子の低下が章館となり、特に術後72時間時点でのXIII, VIII因子活性が術後出血と相関する傾向が示された。さらに本研究と関連し、アラバマ大学で開催された重症心不全に関するシンポジウムに参加し本研究を含めた重症心不全領域における最新の知見に関しての情報交換を行った。これらの中間報告は2017年度人工心臓と補助循環懇話会学術集会で発表した。来年度、人工臓器学会での発表後、論文での発表を予定している。今後は、症例数の蓄積と解析をすすめ、人工心臓装着術周術期におけるより安全で合併症の少ない管理の確立を目指していく。
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