研究課題/領域番号 |
16K19967
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
佐村 誠 山口大学, 医学部附属病院, 診療助教(4日/週) (30773402)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アペリン / 細胞移植治療 / 老化 |
研究実績の概要 |
これまで我々は、低酸素プレコンディショニングにより細胞機能を賦活化した末梢血単核球細胞移植と血管成熟因子アペリンの同時投与による新たな血管再生治療法を考案した。新生血管成熟化の観点から本法はその相乗的効果により、従来の細胞移植治療以上の治療効果を発揮することを若齢健常マウスにおいて明らかにした。同時投与したアペリンは、血管平滑筋細胞への増殖・遊走作用、PDGFRの発現亢進作用のみならず、低酸素プレコンディショニングにより発現が亢進した末梢血単核球細胞のアペリン受容体に作用し、PDGF-BB産生の亢進を誘導することで、PDGFシグナルを介し相乗的に血管平滑筋細胞の新生血管周囲への遊走を増加させ、新生血管の成熟化を促進させた。しかし、重症虚血肢患者の多くは高齢であり、骨髄細胞をはじめ様々な細胞で機能低下が生じることが知られていることから、これらの相乗的新生血管成熟化が老齢機能障害マウスでも示されるかを検証することとした。 平成28年度は主にin vitroの実験を中心に行った。老齢マウスから単離した末梢血単核球細胞のアペリン受容体が低酸素プレコンディショニングにより亢進するか否か、さらにアペリン作用によりPDGF-BB産生の亢進が示されるかを検証した。老齢マウスから単離した末梢血単核球細胞のアペリン受容体の発現をWestern blot法により検証した結果、アペリン受容体の発現は見られるものの、低酸素プレコンディショニング処理においてその発現亢進は示されなかった。さらにアペリン処理した末梢血単核球細胞から産生されるPDGF-BBをELISA法で測定した結果においても、同様に産生の亢進は示されなかった。平成29年度はin vivoを中心に本同時投与の治療効果について検証していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は主にin vitroの実験を行い、期待した結果は得られなかったものの、概ね研究計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
老化した末梢血単核球細胞は他の細胞同様、細胞機能が低下している可能性があり、アペリン受容体発現やアペリンに対する感受性も低下している可能性が示唆された。次年度はその原因や改善策を探求しつつ、実際のin vivoでの治療効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は順調に進んだため、ほぼ予定通りの使用額に収められ、わずかな未使用額が生じたのみで あった。この未使用額については、平成29年度に上乗せして全て使用する。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度のin vivoに使用する試薬等の購入費に併せて使用する。
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