研究課題
大動脈解離は突然発症する致死的疾患であるが、病態は不明で予防方法は存在せず、外科的手術以外の治療法もない。大動脈解離は最近増加傾向にあり、突然死による社会的損失も大きいことから、その予防と治療法の開発は解決すべき重要課題である。申請者の予備的検討から心血管疾患の危険因子である塩分過剰が大動脈解離を増悪させ、そのメカニズムの中心にIL-17と細胞外マトリックス(ECM)が関与している可能性が示された。塩分過剰が大動脈解離を増悪させるメカニズムを解明し、治療戦略を開発することを目的に研究を進めた。マウスへの塩分負荷は大動脈組織のIL-17Aを変化させずIL-17受容体を増加させNFkBを活性化したことから、塩分過剰がL-17感受性を高める可能性が示唆された。マウス大動脈解離モデルの網羅的遺伝子解析では、大動脈解離刺激はECM遺伝子群に大きな影響を及ぼし、IL-17ノックアウトはECM遺伝子群の発現パターンを大きく変化させた。野生型マウス大動脈において塩分負荷はTGFβ経路の抑制分子Smad7の発現を亢進させる一方、IL-17ノックアウトマウスの大動脈ではSmad7の発現低下とSmad2活性亢進が認められた。マウス大動脈組織のピクロシリウスレッド染色では、野生型マウスと比較してIL-17ノックアウトマウスでは中膜コラーゲン線維が増加していた。TGFβ経路はECM代謝制御因子であることから、IL-17はTGF-β経路を介してECM代謝を抑制すると考えられた。以上より、塩分過剰はIL-17を介してECM代謝異常、大動脈解離増悪を引き起こすことが示された。塩分過剰/IL-17経路は大動脈解離の有効な予防および治療ターゲットとなる可能性が高い。今後は、塩分過剰によるTGF-β経路への影響を引き起こすメカニズムの解明を行い、さらなる病態解明と予防・治療ターゲットの同定を目指す。
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