研究課題
本研究は、肺癌に対するNKT細胞を用いた免疫療法の有効性の向上のため、新たな免疫療法を確立することを目的する。AhRシグナルがPD-L1の発現を抑え、NKT細胞によるIFN-γ等のサイトカイン産生及び細胞障害活性を上げるという仮説に基づき以下の実験を行ってきた。平成28年度は、in vitroでNKT細胞におけるPD-L1の経時的な発現変化をAhRのアンタゴニスト、CH223191もしくはAhRリガンド、FICZを添加した条件下で検討した。フローサイトメーターによる解析では、CH223191の存在下でNKT細胞表面上のPD-L1の発現が増加し、逆にFICZの存在下では減少することを明らかにした。AhRリガンド投与によりPD-L1の発現が抑制されることで、NKT細胞の抗腫瘍活性が増強するかをヒト肺癌A549細胞と共培養を行い確認したところ、抗腫瘍活性の差異は認められなかった。このことから今後は共培養を行う細胞株を変更する等の条件設定を行いin vitroでのAhRシグナルとNKT細胞の抗腫瘍効果増強に関する検討を進めていく。同時に、重度複合免疫不全マウスであるNOGマウスを用いた肺癌モデルに培養したヒトNKT細胞を投与し、NKT細胞療法を再現し、そこにAhRのアゴニストを添加することでNKT細胞活性が増強するかどうかをin vivoで検討し治療への応用を検討する。
3: やや遅れている
in vitroでのNKT細胞におけるPD-L1の発現とAhRシグナルの相関関係について明らかにすることができた。一方、AhRリガンドを添加しPD-L1の発現を抑制した状態におけるNKT細胞の抗腫瘍効果の増強に関する具体的な結果はまだ得られていないため、やや遅れが生じている。
今後は抗腫瘍効果を検討する腫瘍細胞株の変更等、細かい条件設定を再検討し研究を遂行して行く。同時に、NOGマウスを用いた肺癌モデルに、培養したヒトNKT細胞を投与しNKT細胞療法を再現する。そこにAhRのアゴニストを添加することでNKT細胞活性が増強するかどうかを、IVISを用いた画像解析によって腫瘍の大きさの観察を行い、さらに腫瘍微小環境でのNKT細胞の活性をin vivoで検討することで、NKT細胞治療への応用を確立する。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Cancer Immunol. Immunother.
巻: 65 ページ: 1477-1489
10.1007/s00262-016-1901-y