研究課題/領域番号 |
16K19976
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
片岡 瑛子 滋賀医科大学, 医学部, 医員 (00746919)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 肺がん / がん間質線維芽細胞 / Galectin-3 |
研究実績の概要 |
本研究は、肺がん組織において腫瘍細胞とがん間質線維芽細胞(CAF)に共通して高発現しているgalectin-3に着目し、肺がん細胞とCAFとの相互作用におけるgalectin-3の機能を明らかにすることを目的としている。まずヒト肺がん細胞とCAFにおけるgalectin-3の発現量や細胞外への分泌量の程度を調べるために、ヒト非小細胞肺がん株6種類と外科的切除された肺がん組織から樹立したCAFを用いて、galectin-3のmRNAレベルおよびタンパクレベルの発現と分泌量を評価した。CAFにおいてgalectin-3の発現は、肺がん細胞と同程度に高発現していたが、分泌量に関しては肺がん細胞と比較してCAFで4~20倍多く、腫瘍微小環境においてCAFがgalectin-3の主要な供給源である可能性が示唆された。また、外因性のgalectin-3がヒト肺がん細胞株A549とCAFそれぞれに与える影響に関して明らかにするために、レコンビナントのgalectin-3を添加し、細胞増殖能や浸潤能、galectin-3の発現量を検討したが、肺がん細胞とCAFともに変化はみられなかった。Galectin-3を高濃度に分泌しているCAFの培養上清を用いてA549を培養すると有意に浸潤能が増強し、CAFの培養上清にgalectin-3阻害物質を添加すると浸潤能は有意に抑制された。さらに、A549にレコンビナントのgalectin-3を添加し、浸潤に関与するTGF-beta受容体やEGF受容体の発現を調べると、細胞表面上のTGF-beta受容体は変化がみられなかったが、EGF受容体は有意な発現上昇を認めた。このことから、CAFが分泌するgalectin-3が肺がん細胞表面上のEGF受容体の発現を上昇し、浸潤能の増強に関与している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺がん細胞から分泌されているgalectin-3がCAFに影響を与えていると当初考えていたが、肺がん細胞よりもCAFにおいてgalectin-3の分泌量が圧倒的に多く、CAFが分泌しているgalectin-3が肺がん細胞に影響を及ぼしている可能性が示唆された。また、レコンビナントのgalectin-3を添加しても予想に反して肺がん細胞とCAF共に増殖能や遊走能、浸潤能いずれにも影響はみられなかった。以上2点の予期していない結果のため、実験内容の再検討、追加実験を要したが、平成28年度予定していた検討に関しては概ね終了した。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト肺がんにおけるgalectin-3の発現とその意義を調べるために、追加実験として、肺がんの手術組織標本を用いてgalectin-3の免疫染色を行い、腫瘍細胞およびCAFにおけるgalectin-3の発現と病理学的因子や予後との関連性を明らかにする。また、肺がん組織におけるgalectin-3の発現と分泌量に相関があるかを、手術前後の患者血清を用いてgalectin-3の分泌量をELISAで測定し、in vitroでの検討とあわせて評価する。 平成28年度に作製したgalectin-3ノックダウン肺がん細胞株(A549、LK-2)を用いて、細胞増殖能や遊走能、浸潤能を評価する。また、galectin-3ノックダウン肺がん細胞株とCAFを共培養することで得られる影響について検討し、内因性と外因性のgalectin-3の機能を明らかにする。さらに肺がん細胞とCAFを用いたin vivoにおける実験の条件設定を見直した上で行い、galectin-3が肺がん細胞またはCAFにおける治療の標的分子となり得るかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に施行した実験結果をもとに追加する実験を平成29年度に行うため、物品費に関して次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
ヒト肺がん手術組織標本と血清中のgalectin-3の発現および分泌量を測定するために免疫染色やELISAに関する物品に使用する予定である。
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