研究実績の概要 |
本研究は、肺がん組織において腫瘍細胞とがん間質線維芽細胞(CAF)に共通して高発現しているgalectin-3に着目し、肺がん細胞 とCAFとの相互作用におけるgalectin-3の機能を明らかにすることを目的としている。まず肺がん細胞が分泌しているgalectin-3がCAFに及ぼす影響を調べるために、ヒト肺がん細胞細胞株A549, LK2とgalectin-3の発現をノックダウンした安定細胞株を用いて、培養上清または共培養によりCAFのgalectin-3の発現と機能的なマーカーであるα-SMAの発現、増殖能、浸潤能を評価した。肺がん細胞株の培養上清および共培養により増殖能に関しては変化がみられなかったが、CAFのgalectin-3やα-SMAの発現の上昇および浸潤能の増強が認められた。しかしながら、肺がん細胞のgalectin-3の発現をノックダウンすることで、CAFのgalectin-3やα-SMAの発現および浸潤能に関して抑制効果はみられなかった。これらの結果より、肺がん細胞からの分泌されるgalectin-3自体がCAFの悪性度に直接的に関与しているのではないことが明らかになった。 次に手術組織標本を用いて、肺がん組織の腫瘍細胞とCAFにおけるgalectin-3の発現と臨床病理学的因子および予後との関連性を評価した。腫瘍細胞とCAFともにgalectin-3の高発現群において、術後再発率および脈管浸潤との有意な関連性を認めた。 肺がん細胞よりもCAFにおいてgalectin-3 の分泌量が多く、細胞外のgalectin-3により肺がん細胞のEGFRシグナルが増強されることから、腫瘍微小環境においてCAFから分泌されるgalectin-3が肺がん細胞の浸潤能の促進に関与し術後再発に寄与している可能性が示唆された。
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