肺癌は日本における癌死亡の第1位を占める予後不良な疾患で、中でも肺線維症や間質性肺炎の合併は肺癌の重要な予後不良因子の一つである。肺癌の増殖・転移に癌関連線維芽細胞の関与が注目されているが、肺線維症・間質性肺炎の病態である肺線維芽細胞の増加や活性化と、これに合併した肺癌への影響は明らかにされていない。一方C型ナトリウム利尿ペプチド (CNP;C-type Natriuretic Peptide) は、動物実験モデルで肺線維症の抑制効果が報告されており、申請者はその作用機序として肺線維芽細胞の活性化抑制効果を明らかにした。今回申請者は、肺線維症・間質性肺炎における肺癌の増殖・転移促進の機序を解明するとともに、線維芽細胞を介したCNPの治療効果を検証し、ヒト肺癌切除検体を用いてCNPの臨床応用可能性について検討することを目的として研究を開始した。申請者は、肺線維症発症モデルマウスの肺にマウス肺癌細胞株を同所移植し、正常なマウスの肺に移植した場合と比較して、腫瘍の著明な増大と短期間での対側肺転移を来すモデルを作製した。このモデルは、肺線維症・間質性肺炎合併肺癌の予後不良な臨床像を反映したものと考えている。
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