研究課題
上皮成長因子受容体 (EGFR)遺伝子変異のある肺がんにはチロシンキナーゼ阻害剤 (TKI)が劇的に効く。しかし、一旦効いても必ず耐性を獲得することが問題である。我々はこれまでに、EGFRエクソン18の変異をもつ肺がんには従来の第一世代EGFR-TKIよりも第二世代のアファチニブが有効であることを示してきた (Kobayashi et al. Clin Cancer Res 2015)。本研究の目的は、EGFR common mutation (エクソン19欠失変異とエクソン21 L858R)に加えてエクソン18のG719Aとエクソン18欠失変異を遺伝子導入した肺がん細胞モデルからアファチニブ耐性株を樹立し、その耐性機序を解明することである。まず、上記4種類の細胞モデルを長期間アファチニブに暴露し続けて耐性細胞を樹立すると、従来のT790M変異だけでなく新規L792F変異がみつかった。次に、この新規変異が起こりうる頻度を明らかにするために、点突然変異を起こしやすくする発がん物質 (ENU)を用いて84個のアファチニブ耐性クローンを樹立した。その結果、12%でC797SまたはL792Fを獲得し、残りはすべてT790Mであった。各世代EGFR阻害剤に対する耐性変異の強弱関係を調べると、アファチニブに対する耐性の強さはL792F、C797S、T790Mの順に強くなることがわかった。また、L792Fはダコミチニブが、C797Sにはエルロチニブが有効であることがわかった (Kobayashi et al. Mol Cancer Ther 2017)。この結果は、アファチニブ耐性患者の新規耐性機序とその克服法を提唱するものである。
2: おおむね順調に進展している
EGFR肺がん細胞モデルからアファチニブ耐性株を樹立し、新規変異を含む耐性機序を明らかにした。
これまでに肺がん細胞モデルから明らかにした新規耐性機序を実際の臨床検体で検索していく。また、EGFR二次変異以外の耐性機序解明についても研究を進める予定である。
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Molecular Cancer Therapeutics
巻: 16 ページ: 357-364
0.1158/1535-7163.mct-16-0407
Cancer Science
巻: 107 ページ: 1179-1186
10.1111/cas.12996