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2016 年度 実施状況報告書

腫瘍浸潤T細胞を投与する新たな肺がん個別化免疫細胞療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K19990
研究機関国立研究開発法人国立がん研究センター

研究代表者

吉川 聡明  国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, 研究員 (00625957)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワード肺がん / 腫瘍浸潤リンパ球 / 遺伝子変異由来抗原
研究実績の概要

本研究では肺がん患者に対する免疫療法を開発するため、患者個々で異なる遺伝子変異に由来する抗原ペプチドや、蛋白プロセッシング異常により生じた自己抗原ペプチドを認識した腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を使用することの有効性を調べることを目的とした。肺がん患者50例の手術切除検体使用した。まず、ex vivo FACS解析を行ったところ、腫瘍組織中のCD8+細胞は正常組織中のCD8+細胞と比較してCD107aや免疫チェックポイント分子の発現が上昇していた。これらのマーカーにより腫瘍反応性を持つCD8+細胞を早期に単離できるかどうか検討を続けている。一方、全例でTILと線維芽細胞を培養により増殖させることができ、一部の患者ではPatient derived xenograft (PDX)によるがん細胞株の樹立もできており、これらを使用してTILの自己腫瘍反応性をCD107a解析により評価した。さらに32例においては次世代シーケンサーによる全エクソーム解析を行い、正常組織との比較によりがん特異的な遺伝子変異を同定した。それらの遺伝子変異の中からペプチド-HLA-class I結合予測アルゴリズムにより、HLA class I分子に結合すると予測されるペプチドの候補を患者毎にリストアップした。今後はこれらの遺伝子変異由来候補ペプチドやRNA-seqにより同定されたがんで過剰発現している新規抗原を候補にあげ、腫瘍反応性を持つTILの認識抗原を同定していく。さらに、腫瘍反応性を持つTILをex vivoで識別するマーカーを同定し、そのようなTILのT細胞受容体(TCR)を早期に単離し遺伝子導入する方法も開発していく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初計画していた肺がん患者50例の手術切除検体は集積が完了し、全例でTILと線維芽細胞を培養して増殖させた。一部の患者ではPDXによるがん細胞株の樹立を試みており、培養したTILとPDX腫瘍を使用して自己腫瘍反応性の評価を行った。32例においては次世代シーケンサーによる全エクソーム解析とペプチド-HLA-class I結合予測アルゴリズムにより、患者毎に異なるがん特異的遺伝子変異のなかからHLA class I分子に結合すると予測されるペプチドの候補をリストアップした。現在、全エクソーム解析を行った症例においてRNA-seqも行うことで候補となる遺伝子変異由来抗原の発現を確認するとともに、がん特異的に過剰発現している新規抗原を同定することを進めている。

今後の研究の推進方策

今後は予測した遺伝子変異由来ペプチドやRNA-seqにより同定されたがんで過剰発現している新規抗原を候補にあげ、自己の線維芽細胞にパルスしてターゲットにすることで腫瘍反応性を持つTILの認識抗原を同定していく。一方、昨年実験方法を確立した遺伝子変異由来抗原のmRNAを作製し線維芽細胞に導入する方法も行い、ペプチド-HLA-class I結合予測アルゴリズムでは予測できないような細胞内でのプロセッシングも反映した抗原の同定も試みる。また、遺伝子変異由来抗原以外にもTILの認識抗原はあると予想されるため、腫瘍組織からcDNAライブラリーを作製し腫瘍反応性を持つTILの認識抗原を同定することも同時に進めて行く予定である。さらに、腫瘍反応性を持つTILをex vivoで識別するマーカーを同定し、そのようなTILのT細胞受容体(TCR)を早期に単離し遺伝子導入する方法も開発していく。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件)

  • [雑誌論文] Perioperative plasma glypican-3 level may enable prediction of the risk of recurrence after surgery in patients with stage I hepatocellular carcinoma.2016

    • 著者名/発表者名
      Ofuji K, Saito K, Suzuki S, Shimomura M, Shirakawa H, Nobuoka D, Sawada Y, Yoshimura M, Tsuchiya N, Takahashi M, Yoshikawa T, Tada Y, Konishi M, Takahashi S, Gotohda N, Nakamoto Y, Nakatsura T.
    • 雑誌名

      Oncotarget.

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.18632/oncotarget.14271.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] インターフェロンαを産生するiPS細胞由来増殖性ミエロイド細胞を用いたがん免疫療法の開発2017

    • 著者名/発表者名
      土屋伸広、岩間達章、張エイ、得光友美、吉川聡明、澤田雄、田久保圭誉、遠藤格、中面哲也、植村靖史
    • 学会等名
      第16回日本再生医療学会総会
    • 発表場所
      仙台国際センター(宮城県仙台市)
    • 年月日
      2017-03-07 – 2017-03-09
  • [学会発表] In vitroでのヒト化抗CD4抗体(IT1028)によるヒト血液検体中のCD4陽性細胞除去効果の検討2017

    • 著者名/発表者名
      下村真菜美、北野滋久、正田香世子、吉川聡明、横地祥司、伊藤哲、松島綱治、植村靖史、中面哲也
    • 学会等名
      第14回日本免疫治療学研究会学術集会
    • 発表場所
      東京大学 伊藤国際学術研究センター(東京都文京区)
    • 年月日
      2017-02-11 – 2017-02-11
  • [学会発表] 選択的スプライシングによって生成する分泌型Gplypican-3 アイソフォームの同定2016

    • 著者名/発表者名
      Saito K, Yoshikawa T, Saito Y, Fujinami N, Suzuki T, Jimmy C, Nakatsura T
    • 学会等名
      第75回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2016-10-06 – 2016-10-08
  • [学会発表] In vitroにおけるヒト化抗CD4抗体による末梢血中のCD4陽性細胞除去効果の検討2016

    • 著者名/発表者名
      Shimomura M, Kitano S, Syoda K, Iwakami C, Saito Y, Nosaka K, Mizuno S,Yoshikawa T, Yokochi S, Matsushima K, Uemura Y, Nakatsura T.
    • 学会等名
      第75回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2016-10-06 – 2016-10-08
  • [学会発表] IFNαを産生するiPSC由来増殖性ミエロイド細胞のがん治療への応用2016

    • 著者名/発表者名
      Tsuchiya N, Uemura Y, Iwama T, Zhang R, Suzuki T, Yoshikawa T, Sawada Y, Takubo K, Sakaue-Sawano A, Miyawaki A, Endo I, Nakatsura T.
    • 学会等名
      第75回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2016-10-06 – 2016-10-08
  • [学会発表] ヒト血液検体を用いたヒト化抗CD4抗体(IT1208)によるin vitroでのCD4陽性細胞除去の検討2016

    • 著者名/発表者名
      下村真菜美、北野滋久、正田香世子、吉川聡明、横地祥司、伊藤哲、松島綱治、植村靖史、中面哲也
    • 学会等名
      第36回日本分子腫瘍マーカー研究会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)
    • 年月日
      2016-10-05 – 2016-10-05
  • [学会発表] ヒト血液検体を用いたヒト化抗CD4抗体によるIn VitroでのCD4陽性細胞除去効果の検討2016

    • 著者名/発表者名
      下村真菜美、吉川聡明、正田香世子、岩上千鶴、齋藤友貴、野坂和外、水野正一、北野滋久、横地祥司、伊藤哲、松島綱治、植村靖史、中面哲也
    • 学会等名
      第20回日本がん免疫学会総会
    • 発表場所
      大阪国際交流センター(大阪府大阪市)
    • 年月日
      2016-07-27 – 2016-07-29
  • [学会発表] 抗CD4抗体併用によるがんペプチドワクチン療法の効果増強に関する前臨床的検討2016

    • 著者名/発表者名
      藤浪紀洋、吉川聡明、澤田雄、下村真菜美、水野正一、北野滋久、植村靖史、中面哲也
    • 学会等名
      第20回日本がん免疫学会総会
    • 発表場所
      大阪国際交流センター(大阪府大阪市)
    • 年月日
      2016-07-27 – 2016-07-29
  • [学会発表] インターフェロンαを産生するiPS細胞由来増殖性ミエロイド細胞を用いたがん免疫療法2016

    • 著者名/発表者名
      土屋伸広、植村靖史、岩間達章、張エイ、得光友美、鈴木利宙、吉川聡明、澤田雄、田久保圭誉、阪上-沢野朝子、宮脇敦史、千住覚、遠藤格、中面哲也
    • 学会等名
      第20回日本がん免疫学会総会
    • 発表場所
      大阪国際交流センター(大阪府大阪市)
    • 年月日
      2016-07-27 – 2016-07-29

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公開日: 2018-01-16  

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