研究課題
本研究では肺がん患者に対する免疫療法を開発するため、患者個々で異なる遺伝子変異に由来する抗原ペプチドや、蛋白プロセッシング異常により生じた自己抗原ペプチドを認識した腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を使用することの有効性を調べることを目的とした。肺がん患者50例の手術切除検体使用した。まず、ex vivo FACS解析を行ったところ、腫瘍組織中のCD8+細胞は正常組織中のCD8+細胞と比較してCD107aや免疫チェックポイント分子の発現が上昇していた。これらのマーカーにより腫瘍反応性を持つCD8+細胞を早期に単離できるかどうか検討を続けている。一方、全例でTILと線維芽細胞を培養により増殖させることができ、一部の患者ではPatient derived xenograft (PDX)によるがん細胞株の樹立もできており、これらを使用してTILの自己腫瘍反応性をCD107a解析により評価した。さらに32例においては次世代シーケンサーによる全エクソーム解析を行い、正常組織との比較によりがん特異的な遺伝子変異を同定した。それらの遺伝子変異の中からペプチド-HLA-class I結合予測アルゴリズムにより、HLA class I分子に結合すると予測されるペプチドの候補を患者毎にリストアップした。今後はこれらの遺伝子変異由来候補ペプチドやRNA-seqにより同定されたがんで過剰発現している新規抗原を候補にあげ、腫瘍反応性を持つTILの認識抗原を同定していく。さらに、腫瘍反応性を持つTILをex vivoで識別するマーカーを同定し、そのようなTILのT細胞受容体(TCR)を早期に単離し遺伝子導入する方法も開発していく。
2: おおむね順調に進展している
当初計画していた肺がん患者50例の手術切除検体は集積が完了し、全例でTILと線維芽細胞を培養して増殖させた。一部の患者ではPDXによるがん細胞株の樹立を試みており、培養したTILとPDX腫瘍を使用して自己腫瘍反応性の評価を行った。32例においては次世代シーケンサーによる全エクソーム解析とペプチド-HLA-class I結合予測アルゴリズムにより、患者毎に異なるがん特異的遺伝子変異のなかからHLA class I分子に結合すると予測されるペプチドの候補をリストアップした。現在、全エクソーム解析を行った症例においてRNA-seqも行うことで候補となる遺伝子変異由来抗原の発現を確認するとともに、がん特異的に過剰発現している新規抗原を同定することを進めている。
今後は予測した遺伝子変異由来ペプチドやRNA-seqにより同定されたがんで過剰発現している新規抗原を候補にあげ、自己の線維芽細胞にパルスしてターゲットにすることで腫瘍反応性を持つTILの認識抗原を同定していく。一方、昨年実験方法を確立した遺伝子変異由来抗原のmRNAを作製し線維芽細胞に導入する方法も行い、ペプチド-HLA-class I結合予測アルゴリズムでは予測できないような細胞内でのプロセッシングも反映した抗原の同定も試みる。また、遺伝子変異由来抗原以外にもTILの認識抗原はあると予想されるため、腫瘍組織からcDNAライブラリーを作製し腫瘍反応性を持つTILの認識抗原を同定することも同時に進めて行く予定である。さらに、腫瘍反応性を持つTILをex vivoで識別するマーカーを同定し、そのようなTILのT細胞受容体(TCR)を早期に単離し遺伝子導入する方法も開発していく。
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Oncotarget.
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10.18632/oncotarget.14271.