FTY720投与により、脳梗塞のサイズの縮小、死亡率の改善、microgliaとmacrophage抑制効果は用量依存的に改善した。また運動機能回復の促進、BBB保護効果、アポトーシス抑制効果に関してはFTY投与の低・高用量の両群でvehicleに比較し有意に改善が確認された。PETによる経時的な炎症反応の経過を観察したところ、FTY720投与は用量依存性に炎症反応の亜急性での悪化を抑制したことが分かった(脳梗塞後2日目の炎症は各グループで変わりなかったが、9日後ではFTY投与グループで有意に抑制され、特にFTY720高用量グループではほとんど炎症の進行が認められなかった)。Real time PCR・Western blottingでBBBのtight/adherens junctionの構成要素の発現を検討したが、FTY720およびFTY720-Pの投与を行っても改善は認められなかった。一方、tight/adherens junctionの細胞間隙での分布は通常の状態であれば、細胞間にこれらBBB構成要素タンパク質が局在しており、虚血負荷によって細胞内にこれらのタンパクが移動し、結果BBBの破綻をもたらしていたが、FTY720-Pを投与することで細胞内への移動を防ぐことが出来ることが確認された。この機序はFTY720投与では得ることが出来なかった。その理由として血管内皮細胞は十分な酵素を有していないことからFTY720がFTY720-Pに変換されなかったことが考えられた。またこの効果はS1PレセプターアゴニストのPTXを投与することでブロック出来、BBB構成要素はS1Pレセプターのシグナリングが関与していることが証明された。そしてその効果はS1Pレセプター下流のERK1/2が関係していることも証明された。
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