研究課題/領域番号 |
16K19995
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
原 祥子 順天堂大学, 医学部, 非常勤助手 (60772879)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | もやもや病 / 拡散MRI / 高次脳機能障害 / 脳微細構造 |
研究実績の概要 |
これまでに,成人もやもや病患者25名,健常成人8名のMRI検査を行った。患者のうち8名はPET検査をおこなっており,全員で神経心理検査・アンケート検査を行った。本研究においては,①健常人と患者の比較,②患者の神経心理検査結果との比較,③PET検査との比較の3点を行ってきた。各項目について現状の研究実績を報告する。 ①健常人と患者の比較:健常人と比較して,もやもや病患者では拡散MRIから計算される神経細胞密度(intracellular volume fraction)の低下および樹状突起・軸索の散らばり(orientation dispersion)の低下が生じていることが確認された。脳血流障害が存在するが本人拒否などの理由で未治療な患者ほどその傾向が強く,慢性虚血による神経細胞密度の低下,神経ネットワーク構造の単純化が生じていることが示唆された。無症候な患者や症状出現後間もない若年患者ではこの傾向は弱く,健常人と比較し大きな差がない症例もあり,罹患期間や重症度が影響していると考えた。 ②患者の神経心理検査結果との比較:知能指数や性格検査の協調性項目と神経細胞密度,樹状突起・軸索の散らばりには相関があることが示唆された。WAIS知能指数のなかでは処理速度の指標(processing speed index)が強い相関を示しており,もやもや病により脳の広範囲に慢性的な影響があることが原因と考えている。 ③PET検査との比較:拡散MRIの神経細胞密度,軸索・樹状突起の散らばりとPETによる酸素代謝量には相関がみられた。いっぽう拡散MRIによる血流評価とPETによる脳血流の相関は芳しくなく,撮像条件や解析方法に改善の余地があると考えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
症例数は順調に集まっているが,もやもや病は疾患の中でも多様性がある(無症候・虚血症状あり・脳出血後)こと,拡散MRIが年齢性別の影響を受けることから,より優位な結果を得るためにはより多くの症例蓄積が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き症例を蓄積し,いまだgold standardが確立していない拡散MRI解析方法についても検討を重ねる。 研究費による出張での学会発表において,術前後の変化についての質問が多数寄せられた。このため本研究参加後に当院で脳血行再建術をうけた患者については,術後再度の研究協力を依頼し,術前後の比較も検討していくことにした。
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