昨年同様、小胞体ストレス応答の主幹転写因子であるATF6α遺伝子をノックアウトしたマウスを用いた。野生型マウスとATF6αノックアウト(KO)マウスで中大脳動脈閉塞による脳局所虚血モデルを作成し、比較を行った。 昨年、ATF6αKOマウスでは亜急性期の脳梗塞巣近傍においてIgGの漏出が増大していることより、脳血管関門破綻が顕著になっていることを明らかにした。今年は数を増やして検討を行い、その結果は同等であった。 また、昨年慢性期の梗塞巣に関して、継時的に梗塞巣が瘢痕状になることよりサイズ評価は困難であったもののえられたデータでは明らかな差を見いだせなかった。亜急性期に差があった梗塞巣が慢性期には差がなくなることについては、慢性期のATF6αKOマウスではミクログリアの活性化が低下することにより炎症変化が減弱するためと考察を行った。 昨年の少数での検討では、ATF6αKOマウスでは亜急性期からミクログリアの活性化低下が見られていた。今年はマウスの数を増やして検討を行い、やはりATF6αKOマウスでミクログリアの活性化が低下していることを確認した。 申請者のこれまでの報告と合わせるとATF6αKOマウスでの脳虚血変化において、亜急性期まではアストロサイト活性化低下によるグリア瘢痕形成不全と脳血管関門破綻による炎症拡大が顕著になるために梗塞巣増大に関与しているが、亜急性期以後はミクログリア活性化低下により炎症変化が減弱するために梗塞巣拡大が制御されていることが示唆された。
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