平成30年1月1日から12月31日までの1年間に当科で診療を行った、動脈瘤破裂によるくも膜下出血は14例であった(平成28年1月から12月末までが25例、平成29年1月から12月末までが22例)。この患者群は平均年齢:64±16歳、発症時の重症度を表すWFNS gradeは1:6例、2:1例、3:0例、4:1例、5:6例であった。退院時のmRSが0-2の症例は6例であった。高次脳機能評価としてはMMSE・FAB・SDSを測定した。意思疎通困難などで測定が不可能であった患者を除き、計6例から値を得た。MMSEは平均23.8±6.2、FAB:13.2±3.7、SDS:45.8±12.1であった。発症から計測日までは平均8.3±2.3日であった。発症前のADLはいずれも自立であった。発症から計測日までの期間はおおむね1週間-10日目を目安に施行できていた(28年度は12.9±8.5日、29年度は11.9±3.6日)。 この3年間で術後に高次脳機能障害を測定できた症例は合計31例にのぼり、平均年齢:65.5±16.0歳、発症時の重症度を表すWFNS gradeは1:18例、2:5例、3:4例、4:3例、5:1例と、比較的軽症の患者群にシフトしていた。退院時のmRSが0-2の症例は21/31例であった。MMSEは平均23.2±6.8、FAB:12.6±4.8、SDS:41.7±9.1であった。発症から計測日までは平均11.2±6.4日であった。 倫理委員会の申請が遅れており、PET/MRIが撮影できていないが、これらの症例は多くでspasm期にASLを撮影できており、また1週間から2週間の間に脳血管撮影を施行しており、これらとの関連も調べることができる。またspasmの影響を鋭敏に表現できるよう、新しいASLの撮像も組み合わせることを検討している。この撮像法では頸部でシグナルを受けた血流が脳実質に達するtransit timeを計測できる。これらの症例はほとんどがコイル塞栓術を行っており、今年度、高次脳機能障害を評価できた2例でクリッピングが施行されている(評価可能であった31例中では4例)。
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