研究課題
1)血管内皮細胞に対するペントラキシン3(PTX3)の作用を確認する ラット脳血管内皮細胞(rat brain endothelial cell, RBE.4)を用いてPTX3の作用を確認した。RBE.4にPTX3を投与し、細胞増殖の差、血管新生の差を検討した。細胞増殖には有意差を認めなかったが、血管新生の抑制作用が認められた。2)オリゴデンドロサイト前駆細胞(oligodendrocyte precursor cell, OPC)に対するPTX3の作用を確認する 初代培養OPCに対してPTX3を投与した。OPCに対する作用に関しては、オリゴデンドロサイトへの分化、細胞増殖などを検討したが、明らかな有意差を得られなかった。しかし、OPCに対しFGF2を用いオリゴデンドロサイトへの分化を促進した状態でPTX3を投与し検討したところ、オリゴデンドロサイトへの分化を抑制することが判明した。3)マウス白質梗塞モデルを作成する 血管収縮薬のエンドセリン1(endothelin 1)を用いてマウスの脳白質梗塞モデルを作成した。さらに梗塞巣の周囲にてPTX3の発現が亢進していることを認めた。4)siRNAを用いてPTX3発現を抑制する マウスの脳室内にPTX3 siRNAを投与し、脳内でのPTX3発現抑制効果を確認した。さらに3)で作成するマウス脳白質梗塞モデルにおいてもsiRNAによってPTX3の発現抑制が得られることを確認した。
3: やや遅れている
研究計画書では平成28年度に細胞培養を用いた実験として、1)PTX3の血管内皮細胞に対するPTX3の作用、2)オリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)に対するPTX3の作用、3)神経幹細胞(NSC)に対するPTX3の作用の3項目を挙げている。昨年度においては、培養細胞を用いた検討では1)2)の2項目に対するものを施行でき、仮説とほぼ同様の結果が得られた。しかし、NCSに対しての作用は未だ検討中である。これは血管内皮細胞は細胞株を用いた検討であり実験開始がスムーズであったのに対し、OPC、NSCは初代培養を用いることから細胞の作成と実験の結果確認に時間を要したためである。平成29年度は動物モデルを用いた実験「白質梗塞後、亜急性期にPTX3の発現を抑制し作用を確認する」に加え、細胞培養「PTX3によるNSC(ラット初代培養)に対する作用の検討」を並行して検討していく予定である。
平成29年度の研究では、マウスモデルを用いた検討として、「白質梗塞後、亜急性期にPTX3の発現を抑制し作用を確認する」を行う。さらに、細胞培養の検討として、「PTX3によるNSC(ラット初代培養)に対する作用の検討」を並行して行う。1)白質梗塞モデルは安定して作成できており、同時にPTX3 siRNAの効果も確認できている。今後は、術後の脳を免疫組織化学と生化学的に検討する。2)ラットNSCを初代培養で作成する。初代培養の安定した作成は可能であるため、PTX3の投与を行い、細胞増殖や分化に対する影響を検討する。
細胞の作成と実験の結果確認に時間を要したため初年度の研究の進捗がやや遅れたため、細胞の作製や培養にかかる薬品などの消耗品や動物の購入、および成果発表にかかる旅費について次年度に繰り越しとした。
実験計画通り、細胞作製や培養にかかる薬品などの消耗品、動物購入、および研究成果発表のための旅費に充てる。
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