研究課題
本研究ではWT1ペプチドワクチンと免疫チェックポイント阻害剤(Immune Checkpoint Inhibitor)の併用療法の有効性を検証し、さらにその先に認められると考えられる新たな耐性化の機序の解明とその克服技術の開発を目的とする。本年度はまず、過去に施行したWT1ペプチドワクチン療法(WT1療法)の臨床試験で、WT1療法開始後に腫瘍摘出術が施行された症例(WT1療法無効例、もしくは耐性化獲得例と考えられる)の手術標本を用いて、免疫染色で各種腫瘍内免疫応答の確認を行った。WT1療法開始前の標本とWT1療法施行後の標本の結果を比較したところ、WT1療法施行後の標本においてWT1やHLA class1の発現が低下し、TGFβの分泌が上昇していることが明らかとなった。現在追加でPD-1, PD-L1, CTLA-4, MDSC, IDOについても検討を行っている。一方、動物実験においては、マウスグリオーマ細胞株であるGL261にホタルルシフェラーゼ遺伝子を導入し(GL261-Luc)、この細胞株を用いた担脳腫瘍マウスモデルを確立した。このモデルをXenogen IVIS Lumina II (IVIS)で評価可能であることを確認し、撮影条件の条件検討を行った。さらに担脳腫瘍マウスモデルの無治療時の自然経過をIVISで評価した。その結果、細胞株の移植(Day0)後、腫瘍体積はDay2-3に一旦低下し、その後増大傾向を示すことが明らかとなり、少なくともDay6には腫瘍細胞の生着が確認できた。
3: やや遅れている
過去のWT1療法の臨床試験での手術標本が古い影響もあり免疫染色での染色性が悪く、免疫染色の条件検討に時間を要している。
引き続き過去のWT1療法の臨床試験の手術標本を用いて腫瘍内免疫応答の評価を行う。同時に、動物実験の実験系は昨年度までに確立することができたため、担脳腫瘍モデルマウスを用いてWT1ペプチドワクチンと免疫チェックポイント阻害剤の併用療法の有効性を検証する。
昨年度購入を予定していたWT1ペプチドワクチン、モンタナイド(adjuvant)、各種免疫チェックポイント阻害剤などをまだ購入していないため。
本年度は主に動物実験に研究費を使用する予定である。具体的には、動物実験施設代、実験動物購入、治療薬購入(WT1ペプチドワクチン、モンタナイド、各種免疫チェックポイント阻害剤)に使用する予定である。
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Neuro Oncol
巻: 18 ページ: 716-24
10.1093/neuonc/nov266