研究課題/領域番号 |
16K20012
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
岡 史朗 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (20420531)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | spreading depolarization / intracranial pressure / cerebral blood flow / rat |
研究実績の概要 |
(背景)Cortical spreading depolarization(以下CSD)は脳灰白質において神経およびグリア細胞の脱分極が自己伝搬し拡散する現象である。近年頭部外傷、くも膜下出血、脳梗塞患者においてこの現象が観察され病態への関係が注目されている。CSDが発生すると再分極までの過程において脳循環代謝も大きく変動する。CSD後脳循環代謝は脳灌流圧に依存していると報告されているが、脳圧との関連は不明である。くも膜下出血患者では頻繁に脳圧上昇が見られるため、脳圧上昇によるCSDへの影響を明らかにすることは重要である。我々はラットを用い脳圧とCSDの関連を検討した。(方法)雄性SDラット8―10週齢を使用した。麻酔下に動脈圧、脳圧を計測した。1MのKCl溶液によりCSDを誘発させた。脳圧を50mmHgに上昇させた群と正常圧対照群にわけCSD誘発後細胞外電位の変化および脳血流変化を計測した。(結果)脳圧50mmHg群では、脳圧上昇直後に脳灌流圧が平均約30mmHgに低下したがCushing現象により血圧が上昇し、約5分後には対照群と同等の70mmHg前後になり最終的に80-90mmHgと高値で推移した。脳血流も脳灌流圧と同期し脳圧上昇直後には約60%に低下するものの約2.5分で100%に回復し、その後も上昇を続けCSDが発生する直前には145%に到達した。CSDに伴う脳血流変化は50mmHg群において対照群同様の変化を示した。(考察)本研究では著明な脳圧上昇にも関わらず正常脳圧状態と同様の脳血流変化を示したのは驚くべき結果であった。Cushing現象により脳灌流圧が上昇したことが一因と考えられるが通常50mmHgほどの高脳圧では脳循環代謝に影響を与えると考えられており、今後さらなる詳細な検討が必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定より臨床業務に時間がとられ研究を行う時間が制限されたため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果から研究開始前の予想と異なり高脳圧であってもCSDが発生した際には正常圧同様に脳血流が上昇することが明らかとなった。しかしながら脳代謝については不明確であるため、同様の実験系において脳酸素代謝をnear infrared spectroscopyを用い計測する予定である。研究時間が不足する点については研究補助員の助けを借りながら研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進行状況に若干の遅れが生じたため残高が生じた。平成30年度に追加研究を行いその費用に充てる。
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