研究実績の概要 |
我々は、これまで脳梗塞中心部で骨髄由来マクロファージ様細胞が増殖・集積し、特にNG2プロテオグリカン(NG2)を発現する一群の細胞は虚血による組織障害の増悪を防ぐことを示してきた。この脳梗塞中心部では、脳常在性マイクログリアは早期に死滅してしまう。しかし、緩徐な神経細胞死が観察される脳梗塞の辺縁部では、脳常在性マイクログリアの活性化像が観察される。これらの細胞は、活性化アストロサイトによるグリオーシスに沿う約100µm程度の幅の組織(demarcation zoneと呼ぶ)に限って存在する。この活性化マイクログリアの多くはNG2を発現し、虚血辺縁部で変性しアポトーシスする神経細胞を取り囲み貪食することを観察した。ラット中大脳動脈一過性閉塞モデル作成7日後に、梗塞中心部、辺縁部、対側(非虚血側)の大脳皮質を採取し、マイクログリアによるアポトーシス細胞の貪食シグナル分子のmRNAの発現を調べた。脳梗塞辺縁部のNeuronal proteinは、脳梗塞中心部と同様に減少している一方、TREM2やeat-me signalに関連するMFG-E8, MerTK,Gas6, Protein S、補体(C1q,C3)が上昇していた。また、免疫組織染色において、脳梗塞辺縁部の活性化マイクログリアはCD68陽性ファゴソームをもち、C3, ProteinS陽性のNeuronに接着していた。これらの結果より、マイクログリアは、これらの貪食関連の分子を介して、ニューロンを選択的に貪食していることが示唆され、これらの分子は緩徐な神経細胞死を抑制するターゲットとなりうる可能性が示された。
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