本申請研究の目的は神経回路の不可逆的損傷を伴わないテント下の腫瘍性病変で且つ良性腫瘍に対象を限定し、術前、術後の治療経過に伴い経時的に機能画像および神経心理学的解析を行うことで、小脳と大脳間の安静時脳内ネットワークのダイナミックな機能的結合性の変化を明らかとすることである。具体的には琉球大学医学部附属病院脳神経外科で加療をしている小脳に病巣をもつ良性腫瘍患者を対象に認知機能評価と磁気共鳴画像解析装置(3T MRI Discovery 750E GE社)を用いた安静時脳活動データの取得を行い、認知機能に関係する小脳と大脳間の機能的結合性について解析を行う試みである。昨年度に引き続き良性の小脳腫瘍患者(2名)のおよび健常被験者(5名)を対象として認知機能評価と安静時脳活動データの取得を行った。治療前の認知機能の評価としては、全般性認知機能評価としてMini-mental state examination (MMSE)と長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)、注意機能・作業記憶評価としてDigit span test、情報処理速度評価としてDigit symbol test、視空間構成機能評価としてBlock test、Cube copying test、実行機能評価としてTrail making test、Stroop testを使用してデータの収集を行った。昨年度と合わせて小脳腫瘍患者は合計5名、健常被験者は合計10名であり当初の研究計画で希望していた対象人数よりも少ない結果となった。術前の認知機能の評価では、実行機能を反映するTrail Making Testで成績の低下が見られる結果となった。
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