研究実績の概要 |
我々はこれまでに中枢神経系原発悪性リンパ腫(Primary Central Nervous System Lymphoma, PCNSL)について,中枢神経系に特殊な免疫環境の観点からこの腫瘍を特徴づける遺伝子解析結果を報告した(Nakamura et al 2015).今回PCNSLに対するエピゲノム領域,とりわけDNAメチル化を解析することで更なる分子生物学的特徴を明らかにすること,またその結果を基にこれまで判っていないこの悪性脳腫瘍の起源に迫ることを研究の目的して, Infinium HumanMethylation450 BeadChip (Illumina)を用いた網羅的メチル化アレイ解析をPCNSL腫瘍組織検体に対しておこなった.対象となる100症例程度の検体におけるデータを抽出し,一方でpublic databaseより全身性びまん性大細胞B細胞リンパ腫(DLBCL)のraw dataを入手しデータ処理をおこなった. この結果,PCNSLと全身性DLBCLとの比較をおこないながら中枢におけるリンパ腫を特徴付けるエピゲノム変化を捉えたのでその内容を学会報告や論文化をおこなった.最終的に本研究に基づいた論文報告をおこないActa Neuropathologica誌(IF 12.213 2016/2017)に採択された(Accepted: 24 December 2016 / Published online: 5 January 2017). また,脳腫瘍関連における学会発表や勉強会,また共同研究者による発表における引用によって多くの場面での発表を行った.本研究によって得られたアレイ解析データはGEOデータベースにGSE92676としてアップロードしており,今後のPCNSL研究の基盤としての役割を果たすと考える.
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