本研究では,淡蒼球内節と淡蒼球外節の境界細胞の細胞活動の特徴を明らかにすること,とくにDBS手術中に採取される神経細胞活動が,どのような特徴があるかを明らかにすることを目標に進められた.17例(34側)に対しDBS手術中の細胞活動の記録・解析を行い,境界細胞の細胞活動の特徴を明らかにし,21側において境界細胞の細胞活動が採取できた.これらの細胞活動は比較的発射頻度が低く,単調な発射リズムであることが確認された.続いて,DBS手術の際に同細胞集団の存在部位に電極を正確に留置するために,解剖学的位置を設定することとしたが,境界細胞が採取できた症例では採取されたた細胞の分布幅は1mm以内であることがほとんどであり,術前に撮影されたMRI画像における淡蒼球内節・外節の境界領域と同等の部位であった.術後,長期的に同部位に留置した電極に対して持続刺激を行った際に,どのような症状変化がみられるのか,また刺激パラメタはどのようなものが良いのかを検討した.境界細胞が採取できた症例では同部位に留置された電極を刺激治療に用い,24週後の長期予後を観察した.その結果,同部位の刺激は全体的な運動症状改善効果をもたらした.境界細胞が採取されなかった症例に対しても同部位の刺激を試み,同等に運動症状改善効果を得ることができ,両群間に有意差はみられなかった.刺激パラメタの最適な値を検討したが,一定の見解を得ることができず,さらに長期的な予後検討が必要であると考えられた.認知機能検査,前頭葉機能検査を術後の経過ごとに観察したが,今回の検討では境界細胞の活動の採取ができ,その部位を刺激している症例,採取できなかったが同部位の刺激を行った症例,対照群を比較したが,認知機能低下進行が明らかであった症例と刺激部位には大きな差はみられず,引き続き観察期間を延長して検討中である.
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