研究課題/領域番号 |
16K20021
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
高瀬 創 横浜市立大学, 医学研究科, 共同研究員 (00549975)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | apoptosis / oxidative stress / cerebral ischemia / repercussion injury |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、2015年に心筋において発見された酸化ストレス応答性アポトーシス誘導因子ORAIP(Oxidative stress-Responsive Apoptosis Inducing Protein)の、中枢神経系における存在確認と、脳虚血再灌流モデルラットを用いてORAIP中和抗体の効果を検討し、将来の治療ターゲットとしての可能性を評価することである。 2016(平成28)年度は研究実施計画に沿って、脳梗塞組織切片を用いた中枢神経系におけるORAIP発現の有無とその時間的推移、ペナンブラ領域におけるアポトーシス評価、ELISAを用いた脳梗塞モデル動物における髄液中ORAIP濃度の定量評価、ORAIP中和抗体治療による脳梗塞体積評価を行った。 結果、脳梗塞組織切片においてORAIPの発現が確認され、それは虚血再灌流後15分でピークを認める傾向にあった。また、髄液中ORAIP濃度測定では、再灌流後30分のORAIP濃度が他の時間と比べて高値であった。梗塞周囲ペナンブラ領域では抗体投与によりTUNEL染色陽性細胞数が抑制され、同様に脳梗塞体積評価においても抗体の用量依存的な有意な減少を認めた。 以上の結果より、①中枢神経系におけるORAIPを介した新たなapoptosis系の存在、②脳虚血再灌流後超急性期におけるORAIPの細胞外分泌ピーク、③ORAIP中和抗体の脳虚血再灌流障害に対する脳保護効果、が示された。 以上の結果を踏まえて、2017(平成29)年度は、組織免疫染色におけるORIAP陽性細胞とアポトーシス細胞の定量的評価や、各種中枢神経細胞におけるORAIPの発現などについて、詳細な検討を行う予定としている。最終的には、ORIAPの構造解析を行ってその拮抗物質を開発し、同様のin vivo実験においてその効果を検討して将来的な治療法開発へのステップとしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
脳梗塞動物における血液混入のない髄液採取と、ELISAによる髄液中ORIAP濃度測定、また、脳組織標本におけるORAIP染色系の確立に予定以上の時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は各種細胞種マーカーを用いた免疫染色を行い、中枢神経系のORAIP発現に関する細胞種間の時間的差異を評価することにより、治療応用時の至適期間の類推を行う。また可能であれば、将来的な臨床応用へ向けて、ORIAP誘導性細胞死を阻害する低分子化合物の開発と効果の解析を行いたい。
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