脳静脈虚血は、比較的軽度かつ長時間持続する虚血を特徴とする故、虚血巣や周辺組織にはその際に様々な修飾が加えられている可能性がある。本研究はこの特異な脳静脈虚血の病態解明と治療法の開発を目的とし、具体的には、動物実験モデルを利用して内因性神経幹細胞の発現動態を明らかにすることで今後の同分野の研究基盤を確立する事として研究を計画した。 本年度は,昨年度の研究で作成した蛍光免疫染色プロトコールを用いて、脳静脈虚血モデルの脳切片での評価を行った. 具体的には、脳静脈虚血ラットモデル(3日連続BrdUを腹腔内投与したのち、5週間後に脳を摘出し4%PFAに固定して作成した脳凍結切片)のBrdU・NeuNの蛍光免疫染色では、いずれの切片でも、脳皮質領域の梗塞巣周辺に、BrdU・NeuN共陽性で新生神経細胞を示唆する細胞を認める一方、対側脳皮質領域や、虚血巣から離れた脳室壁近傍などの遠隔領域での発現は一切認められなかった. また、脳静脈虚血ラットモデル(虚血翌日から14日連続BrdUを腹腔内投与したのち、15日目に脳を摘出し4%PFAに固定して作成した脳凍結切片)のBrdU・Dcx蛍光免疫染色では、虚血巣周囲に共陽性の内在性神経幹細胞を示唆する細胞の発現が見られるも、中大脳動脈閉塞モデルの研究報告で認められるような脳室壁近傍なの遠隔領域近傍には共陽性細胞は認められなかった。 脳静脈虚血では、脳虚血局所に神経幹細胞の発現や神経細胞の新生が示唆されたが、その発現分布は中大脳動脈閉塞モデルの報告とは異なる可能性が示唆された。
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