研究課題
本研究は脳腫瘍を対象として効果的治療法確立のための腫瘍の生物学的特性を反映する分子生物学的分類の確立、腫瘍発生メカニズムの解明などを目的とする。平成29年度は1.妊娠中に発症した脳腫瘍における腫瘍増大機序の検討、2.1p19q共欠失を持たないWHO grade 2、3の神経膠腫における病理組織学的、分子生物学的予後因子の検討を行った。上記1に関しては、2003年から2017年の間に当院及び共同研究機関で手術を行った症例のうち妊娠中あるいは分娩後に発症した脳腫瘍12例(神経膠腫5例、髄膜腫3例、脊索腫2例、聴神経鞘腫2例)を対象とし、CGHによる腫瘍染色体解析、ホルモン受容体やgrowth factor(estrogen receptor(1D5)、progesterone receptor(PgR636)、androgen receptor(AR27)、EGFR(31G7)、HER-2(CB11)、VEGFR-1(AF321)、VEGFR-2(55B11))の免疫組織化学的解析を行い、腫瘍型や発症時期(各ホルモン分泌のピーク時期など)との関連、共通する分子生物学的異常などにつき検討を行った。今年度は新たに共同研究機関で手術を行った神経膠腫の1例を加え解析を行った。CGHおよび免疫染色にてc-Myc遺伝子の増幅あるいは発現増加が複数の症例で認められ、妊娠中あるいは分娩後に腫瘍が増大する機序との関連性を検討中である。上記2に関しては、1990年から2016年の間に当院で手術を行ったWHO grade 2、3の神経膠腫93症例につき、病理組織型の再検討、組織学的グレード、CGHにおける染色体コピー数異常、IDH変異の有無、ATRX遺伝子発現の有無、MGMT及びTERT遺伝子プロモーター領域変異の有無などの形態学的・分子生物的解析及び臨床因子を解析し生命予後との関係を分析中である。
2: おおむね順調に進展している
上記1に関しては、現時点で新たな1例を加えすでに解析がほぼ終了しており、今年度中には論文化できる見込みである。上記2に関しては、現時点ですでに解析が8割終了しており、今年度中にはすべての解析を終了し論文化できる見込みである。
上記2に関しては、病理組織型の再検討においては当院病理部のみならず、他院神経病理医による再判定も行い、特に形態学的乏突起膠腫の意義を分析する。IDH変異あり、1p19q共欠失なしの予後不良例においてはエクソームシークエンスを行い、TCGAの結果などと比較検討予定である。
理由:未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果である。使用計画:次年度の物品の購入に使用する予定である。
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