研究実績の概要 |
本研究では、脳腫瘍の定量的鑑別に有用な放射線学的指標(ラジオロジカルマーカー)を明らかにするとともに、この手法を術中迅速病理診断支援に応用することを目的として、DCE-MRI(permeability imaging)とDSC-MRI(CBV)の2種類のMR灌流画像による悪性神経膠腫 、中枢神経悪性リンパ腫の定量的性状解析、②病理組織所見との対比、③脳腫瘍の定量的鑑別に有用なラジオロジカルマーカーの検討を行った。病変部にマニュアル操作による関心領域を設定しCBV, Ktrans, Vp, Ve, KEPの各パラメータを測定した。各灌流画像マップ において病変内部は必ずしも均一ではないため、平均値±SDでは計測部位によって結果に差違が生じる可能性があり、ヒストグラム解析を用いて適切なパーセンタイルでの計測値を算出した。ヒストグラム解析ではROI内の灌流状態をより正確に表現していると考えられ、脳腫瘍の定量評価にはヒストグラム解析は必須であると考えられた。解析には専用の医用画像処理ワークステーションを用いて計測値の定量解析を行った。術後の病理組織所見に基づき定量解析結果を用いて統計学的有意差を検定し、鑑別に有用なパラメータとカットオフ値を検討した。その結果、悪性神経膠腫はKtrans低値、CBV高値、悪性リンパ腫はKtrans高値、CBV低値を示す傾向にあった。更にKtrans、CBVの両者を併用することで、悪性神経膠腫と悪性リンパ腫をより高い感度で鑑別することが可能であることが示された。従ってKtransを含むDCE-MRI及びDSC-MRI(CBV)の組み合わせによる評価法は、悪性神経膠腫と悪性リンパ腫の鑑別において有用なラジオロジカルマーカーであると考えられた。
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