研究課題
平成28年度はラット脳内と骨格筋内の酸素分圧の計測を行い、組織部位での比較を行った。成ラットの頭蓋を露出したのち、正中から3㎜右側に骨孔を作製し21G外筒を垂直に固定した。針型酸素プローブを外筒内に刺入し、先端を脳実質内に留置した。高気圧酸素実験装置内にラットを留置し①常圧空気、②常圧酸素、③高圧酸素に変化させ酸素濃度を計測した。脳白質内と脳底部の2部位をそれぞれ測定した。下腿筋内の計測は筋内に針型酸素プローブを刺入した。脳白質での計測結果;①常圧空気:酸素濃度は15-25mmHgで経過した。②常圧酸素:装置内を純酸素で置換すると20-30mmHgで経過した。③高圧酸素:純酸素環境下に2.5気圧まで加圧すると95mmHgまで上昇したが経時的に75mmHgまで低下した。脳底部での計測結果;酸素濃度は①常圧空気:20mmHg,②常圧酸素:200mmHg,③高圧酸素:加圧後は620mmHgまで上昇した。下腿筋内での計測結果;①常圧空気:45mmHg,②常圧酸素:170mmHg,③高圧酸素:550mmHgまで上昇した。下腿筋内と比較すると脳白質内の酸素濃度の変化は緩徐であったのに対し、脳底部では同様の傾向が認められた。高気圧環境下では取り込まれた酸素は動脈血内に溶解し、体循環に伴い組織へ拡散する。脳白質内は脳血管関門が存在するため体外酸素環境の変化が緩衝された可能性が考えられた。高圧酸素環境における経時的な酸素濃度の低下は、酸素濃度変化に対する血管収縮等の調整機構が影響していると考えられた。脳底部においては主要な動脈が走行しており下腿筋同様に動脈血内酸素濃度の影響を直接的に反映していると考えられた。外的な酸素濃度変化に対する脳白質の酸素濃度変化は、骨格筋より緩徐であり、脳外傷、出血あるいは梗塞といった病的状態での酸素分圧の変化がどの程度回復に影響を与えるか今後の検討が必要である。
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The Journal of Undersea and Hyperbaric Medical Society
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