研究実績の概要 |
間葉系幹細胞は滑膜、骨髄、脂肪などから比較的簡便に採取でき、自己増殖や間葉系組織細胞への分化能を持つことから、再生医療への応用が期待されている。 滑膜から採取可能な間葉系幹細胞は高い軟骨分化能を持つため、自己再生能力に乏しい関節軟骨や半月板の再生医療に有用である。当施設では滑膜由来間葉系幹細胞を用いた軟骨再生等の臨床試験を精力的に行ってきたが、滑膜由来間葉系幹細胞の軟骨再生における作用機序は、未解明の部分が多く残されている。これらの作用機序の解明は滑膜由来間葉系幹細胞を用いた再生医療の発展・実用化には必須である。そこで、本研究では滑膜由来間葉系幹細胞による軟骨再生の作用機序の一端と考えられる炎症性サイトカインに対する滑膜由来間葉系幹細胞の応答を明らかにすることを目的としている。 前年度は、間葉系幹細胞は由来組織によりサイトカインに対する応答が異なる可能性を示唆する結果が得られた。 そこで本年度は、炎症性サイトカインであるIL-1α及びIL-1βが滑膜由来間葉系幹細胞に及ぼす影響について詳細な検討を行った。 滑膜由来間葉系幹細胞に、炎症性サイトカインであるIL-1α及びIL-1βをそれぞれ添加すると同時に、IL-1シグナルの下流にあるIRAK-1,-4の阻害剤を同時に添加してIL-1α及びIL-1βの影響を検討した。さらに、IL-1α及びIL-1β添加期間の影響についても検討を行った。 IL-1α、IL-1β単独で添加した培養では、前年度同様増殖の促進が確認された。さらに、増殖促進の抑制が予想されたIRAK-1,-4の阻害剤を同時に添加した培養においても、増殖の促進が確認された。IL-1α及びIL-1β添加期間の影響については、添加期間に比例して増殖が促進された。また、IL-1α及びIL-1βの刺激を抜いた後、しばらくの期間、IL-1α及びIL-1βの効果が持続する事が示唆された。
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