脊髄損傷に対する間葉系間質細胞移植の有用性が認められているが,その一方では,移植後の細胞定着率の低さや,単独移植治療による治療効果の限界なども報告されている。一つの理由としては,移植細胞は局所の虚血,炎症,酸化ストレスなどにさらされることが挙げられる。 本研究では,脊髄損傷に対する間葉系間質細胞移植の治療効果について,同一マウスより分離した脂肪由来間質細胞(AD-MSC)と骨髄間質細胞(BM-MSC)を用いて治療効果の比較を行った.また,これら2種類の細胞について,表面抗原解析(フローサイトメトリー),サイトカイン合成能解析(QuantiGene Plex),低酸素抵抗性評価(トリパンブルー染色),酸化ストレス抵抗性評価(XTTアレイ,LiVE/DEAD),移植後の細胞動態評価(蛍光顕微鏡),神経保護効果(蛍光免疫染色),血管新生効果 (蛍光免疫染色)について解析した.これまでの実験結果から,AD-MSCはBM-MSCと比較しストレス抵抗性があり,移植後の生存率も優れていた.移植後には局所の血管新生,神経再生が組織学的に観察された。また,治療効果にはAD-MSCとBM-MSC とは異なる複数のサイトカインが関連することが示唆された.運動機能の改善効果については中等度脊髄損傷に対してはいずれの細胞とも同程度の改善効果が認められた。(Cell Transplant. 2018;27:1126-39.)
|