研究課題/領域番号 |
16K20051
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
由留部 崇 神戸大学, 医学部附属病院, 医員 (10514648)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 椎間板変性 / mTOR / オートファジー / 脊椎 / 整形外科 |
研究実績の概要 |
1.RNA干渉によるmTORシグナル経路の抑制が椎間板変性へ及ぼす影響を明らかにする実験:まずは椎間板細胞へのRNA干渉によるmTORシグナル経路への抑制実験を行った。mTORシグナル経路の制御因子であるmTOR、Raptor、RictorへのRNA干渉をそれぞれ行うと、細胞老化抑制効果と細胞外基質分解抑止効果はいずれのRNA干渉でも認められたが、細胞死抑止効果はRaptorでのみ観察された。以上よりRaptorへのRNA干渉が椎間板保護作用を有することが明らかとなった。今後、椎間板変性動物モデルに対するRaptorへの生体内RNA干渉実験を行うことを計画している。 2.Raptor阻害と同様の効果を有する薬剤が椎間板変性過程へ及ぼす影響を明らかにする実験:RaptorへのRNA干渉はmTORC1を抑制することで椎間板細胞保護作用を有すると考えられる。そのためmTORC1阻害剤を用いることで類似の効果を得ることができると考え、mTORC1阻害剤であるラパマイシン、エベロリムス、テムシロリムス、クルクミンを椎間板細胞へ添加し、その効果を検証した。その結果、ラパマイシン、エベロリムス、テムシロリムスではいずれもRaptorへのRNA干渉と類似の椎間板保護作用が認められたが、その効果は同濃度であってもテムシロリムスで最も顕著であった。テムシロリムスは他の薬剤と比較として親水性が改良されており、それが有用であった可能性が示唆された。以上の結果を受けて、今後、椎間板変性動物モデルに対するテムシロリムスの生体内投与実験を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動物実験の実施が遅れているものの、当該年度に行う予定であった細胞実験は概ね終えることができており、一部では来年度に計画していた範囲の実験についても、結果が出始めている。次年度では動物実験を精力的に実施していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では椎間板変性動物モデルを用いた同ずつ実験を計画しており、椎間板に対するRaptorへの生体内RNA干渉とテムシロリムスの局所投与をそれぞれ行う予定である。その後の変性過程について、単純X線検査、MRI検査、組織学的検討、椎間板細胞表現型の変化、細胞死・細胞老化の評価、細胞外基質関連蛋白の発現度で検討していく。また、オートファジー必須因子であるAtg5への椎間板内RNA干渉を行った群も併せて作成し、mTORC1/Raptorの抑制が及ぼす影響とAtg5/オートファジーの抑制が及ぼす影響についての差異を検討する。これにより、mTORシグナル経路の制御が及ぼす椎間板細胞保護作用の細胞生物学的機序を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験の実施が遅れており、少額であるが未使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に動物実験を行う予定としており、次年度交付分と合算して使用し、当初の計画通りに研究を遂行する計画である。
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