研究課題
1.RNA干渉によるmTORシグナル経路の抑制が椎間板変性へ及ぼす影響を明らかにする実験:平成28年度にヒト椎間板細胞へのRNA干渉によるmTORシグナル経路の抑制効果を検討する細胞実験を行い、mTORシグナル因子のうちRaptorへのRNA干渉でのみ椎間板細胞保護作用が確認された。平成29年度にはラット尾椎椎間板へRaptorのみを特異的に抑制するsiRNAを局所投与し、その後に圧負荷を加えて変性を惹起する動物実験を施行した。単純X線撮影では有意差には至っていないもののRaptor干渉椎間で椎間板高が保持される傾向にあった。現在も動物実験を継続しており、組織学的検討のための標本作成中である。2.Raptor阻害と同様の効果を有する薬剤が椎間板変性過程へ及ぼす影響を明らかにする実験:RaptorへのRNA干渉はmTORC1阻害により椎間板細胞保護作用を来すと考えられる。mTORC1阻害剤が類似の効果を来し得ると考え、平成28年度にヒト椎間板細胞への複数の薬剤の投与を行った。ラパログ(ラパマイシン誘導体)はいずれも椎間板細胞保護作用を示したが、親水性の高いテムシロリムスの効果が最も顕著であった。平成29年度にはラット椎間板へテムシロリムスの局所投与を行った後に圧負荷を加える実験を行い、投与椎間で椎間板高保持の傾向がみられた。3.RNA干渉によるオートファジーの抑制が椎間板変性へ及ぼす影響を明らかにする実験:ヒト椎間板細胞へのRNA干渉を行い、オートファジー必須因子Atg5を特異的に抑制する細胞実験を行った。Atg5へのRNA干渉はアポトーシス細胞死とセネッセンス細胞老化を誘導することが明らかとなった。一方でオートファジーの阻害は細胞外基質代謝やMAPK経路活性には直接的な影響を及ぼしていなかった。現在、ラット椎間板へのAtg5 siRNA局所投与を行う動物実験を施行中である。
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Osteoarthritis and Cartilage
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中部日本整形外科災害外科学会雑誌
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