研究課題/領域番号 |
16K20063
|
研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
岩崎 達也 大分大学, 医学部, 助教 (30769427)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 骨肉腫 / heat shock protein |
研究実績の概要 |
本研究ではADMと17-DMAG の併用効果を検証しHSP90iを臨床応用するための基礎研究を行っている。ADMは肉腫に対する標準治療薬であり、17-DMAGはADM耐性細胞に対し化学療法抵抗性を減弱させる可能性が高いことから、両者の併用は骨肉腫に対して理想的である。骨肉腫細胞に対する17-DMAGとADMの併用効果について検証する。この結果から、ADM耐性の細胞ではP-glycoprotein(Pgp) による薬剤排出機構のため、このICD現象が減弱していると予想されるが、HSP90iを投与することでPgp発現を減弱させADM本来の抗癌作用を増強させると共に、より効果的にICDをも惹起できる可能性がある。すでに我々は、ADMが骨肉腫細胞株に対しImmunological Cell Death (ICD)を引き起こし、抗腫瘍効果を発揮していることを示した。さらに昨年度までの実験では、1) 17-DMAG 投与によりc-MetとPDGFRの発現が有意に低下した。2) 骨肉腫細胞株にADMを投与するとICDが惹起され抗腫瘍免疫が活性化した。これらの結果に基づき、HSP90iのマルチキナーゼ阻害効果に加え、ADMとの併用による抗腫瘍免疫活性の上昇効果についても解析中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の研究成果をもとに、本研究おいて、骨肉腫細胞に対する17-DMAGとADMの併用効果については抗腫瘍効果は見込めそうである。現在その有効性を示す根拠となる基礎実験を行っている。具体的には抗腫瘍効果を最大化できるメカニズムの解明とHSPiを臨床応用するための基礎となる研究を行っている。1)骨肉腫細胞において、17-DMAGがc-MetとPDGFRのチロシンキナーゼ活性と下流のpathwayのリン酸やシグナル伝達機能を阻害できることを検証している。2)c-Metが抑制されることにより、ADM耐性の原因であるP-glycoprotein (Pgp)の発現が抑制できるか確認する。3)17-DMAGによりMDSCおよびTregの集簇が減弱し、抗腫瘍免疫が活性化するか検討する。
|
今後の研究の推進方策 |
骨肉腫における標準化学療法薬剤であるADMの効果を最大化するため、17-DMAGとの併用効果について検証する。さらにADM投与によって免疫活性が低下する可能性も考慮し17-DMAGとADMの投与タイミングについても検討する。17-DMAG 投与により、腫瘍内の免疫抑制機能を有するTreg, MDSCが低下し、さらにCD8(+)T細胞、CD4(+)T細胞、が増加することをa) 腫瘍の蛍光免染、b)腫瘍内リンパ球のFACS解析により評価する。17-DMAG 投与により、腫瘍内の免疫抑制機能を有するTreg, MDSCが低下し、さらにCD8(+)T細胞、CD4(+)T細胞、が増加することをa) 腫瘍の蛍光免染、b)腫瘍内リンパ球のFACS解析により評価する。以上の実験から、骨肉腫細胞に対してHPS90iがもつキナーゼ活性阻害作用、ADMの効果の増強作用、ICD増強作用、さらには免疫抑制因子の抑制による腫瘍免疫増強作用が示されると予想している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
申請時には使用予定の抗体では予備実験に多くの試薬を使用しなければ有用なデータとして活用できないと考えていたが、MTTアッセイやTUNEL アッセイで至適使用濃度と作用時間が早期に判明したことが理由であると考えられる。また動物実験に関しても同様で、報告できるデータが早期に取得できたため予備実験が予想よりも軽減できたことが要因であると考えられる。
|
次年度使用額の使用計画 |
今後はMDSCやRegulatory T cell の解析における抗体など試薬が多必要となるためそちらに重点を置く。とくにFlow cytometry によるソーティングには実験手技の訓練を含めて蛍光標識抗体が必要となるためそちらに使用していきたい。
|