研究課題
我が国において約3500万人が変形性関節症(OA)に罹患している。関節痛を伴い、高齢者の健康寿命を脅かす運動器変性疾患であるが、OA 進行抑制効果をもつ治療薬は存在せず、対症療法が主な治療である。昨今の高齢化社会に伴う医療費の増加から、有効な薬物治療の開発が切望されている。最近のメタアナリシスにより、血管内皮増殖因子A(VEGF)を含む3つのOA 感受性遺伝子が同定された。VEGF 欠失マウスではOA 進行が抑制され、VEGF 受容体リン酸化が抑制されるという先行研究結果から、OA におけるVEGF シグナルはVEGF 受容体を介すると考えられる。本研究ではOA におけるVEGF 受容体の関与を明らかにし、既存のVEGF 受容体阻害薬投与によるマウスOA 抑制効果および疼痛軽減効果を検証することにより、ヒトへの臨床応用へと展開するための研究基盤を確立することを目的として研究を進めている。マウスモデルの作成の時点では成果をOsteoarthritis and cartilageに発表した。VEGFについてはがん治療や眼科分野においてすでに有力な治療標的であり、先行研究より抗VEGF抗体関節内投与がOA 抑制および疼痛軽減に有効である。しかしながら、OA治療は関節軟骨だけでなく、軟骨下骨や血管などの近傍組織も含めて考える必要があり、本研究提案の低分子化合物による治療は抗体治療と比較して、より広範囲組織に標的が可能である。マウスにおける本化合物の研究成果についてはScientific Reportに発表した。また、本研究で使用する治療薬はすでに他の疾患にて臨床試験が終了しているため、OA に対する抑制効果が立証されれば、比較的すみやかな臨床応用が期待できる。
2: おおむね順調に進展している
実験計画にて使用予定であった遺伝子改変マウスの軟骨発生におけるインビボでの表現型確認を終えている(2016年)。2017年度、遺伝子改変マウスOAモデルのデータを中心に解析を行い、表現型の確認を終えている。これまでの結果をScientific Reportに報告し、論文化も完了している。さらなる知見を得るために期限を延長して取り組んでおり、以上より、概ね順調に進展していると考えている
研究提案した新規薬剤投与によるOA治療効果に関するマウス研究を終え、成果をすでに公表している。今後培養細胞を用いた詳細なメカニズムの検討を行っている。ヒトによる臨床研究の可能性について模索中である。現時点では研究計画の変更はない予定である。
本研究では一定の成果は出ていますが、さらなる詳細なメカニズムの解明を目指し、現在研究を継続しています。そのため次年度使用額が生じています。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件)
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