研究課題/領域番号 |
16K20069
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
羽田 晋之介 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (50761459)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 骨棘 / 半月板 / 半月板逸脱 / MRD / 膝OA / 初期膝OA / MRI / T2 mapping |
研究実績の概要 |
変形性膝関節症(膝OA)の病態解明は未だ十分でなく、進行を抑える治療法は存在しない。膝OAの病態解明に向け近年のMRIを用いた研究が盛んに行われ、膝OA進行のリスク因子として内側半月板側方偏位(Medial meniscus radial displacemet: MRD)が重視されている。また。膝OAの初期では骨棘が最も頻度の高い病変であることが明らかとなっている。骨棘は内軟骨性骨化と同様の過程で、軟骨(軟骨棘)を経て骨へと置換されるが従来のMRI評価では軟骨棘は無視されてきた。我々は従来のMRIでは不可能であった軟骨棘を含めた正確な骨棘距離評価を目的にMRI T2 マッピング法の応用を発案した。本研究では「MRDは膝OA初期に形成される脛骨内側の骨棘距離に依存し物理的に半月板が関節外の方向に移動し発生する」という仮説を立てT2マッピング法により正確な骨棘を評価し、膝OA進行因子であるMRDとの関連を解析した。膝関節痛を有する初期膝OA 患者50 名を対象とし、形態学的評価とMRDの距離計測を行った。さらにT2 マッピング法による正確な骨棘距離を計測し。半月板の変性程度も定量化した。それらの項目とMRDの関連について単・重回帰分析を用いて解析した。単回帰分析でMRDと関連した因子は半定量化による軟骨摩耗、骨棘、骨嚢胞、軟骨下骨陥凹、半月板損傷の5項目のスコア、そしてT2マッピング法を用いた大腿骨側骨棘距離、脛骨側骨棘、内側半月板T2値であった。これらの項目による重回帰分析の結果,初期OA患者において脛骨内側の骨棘距離はMRDと強い相関を示し、MRDに対し最も寄与する因子であった(β: 0.65, p<0.001). 以上より、MRDと脛骨側の骨棘は密接に関連する事が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト初期膝OA変化に対するMRIを用いた横断研究として、MRD距離と骨棘距離の密接な関連を見出し、この結果に関し多数の学会発表を行い国際誌への論文投稿中でありおおむね順調と考える。 ヒト初期膝OA変化に対するMRIを用いたMRDと骨棘の関連についての縦断研究として,膝OA進行が加速することが明らかとなっている前十字靭帯損傷患者のMRIデータを用い2回のMRI撮影の間での上記各パラメータの変化量の関連の有無を縦断的に解析を行い,データ解析が終了している.結果をまとめ、こちらの成果も発表を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は臨床研究と基礎研究の両面から仮説を証明していくことを計画しておりH28年度では臨床研究において膝OA初期から認められる脛骨側内側の軟骨成分を含む骨棘形成とMRDが関連する事を明らかにすることが出来た。今後は縦断的解析によりMRIによる骨棘の拡大に伴いMRDも進行することを明らかにすることが必要である。また、この現象を基礎研究の側面からも本病態を明らかにするために、病理学的評価をすすめていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、上記の如く、概ね順調に計画を進めることができた。しかし研究初期段階であるMRI読影およびデータ解析の若干の遅れから、当初購入予定であったソフトウェアや器材の購入が遅れたこと、また、基礎研究で使用する研究費が当初の予定よりも少なかったことが次年度使用額が生じた主な理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、予定通り臨床研究および基礎研究を進めるとともに、新たに生じた疑問を解決するため、動物やヒトサンプルを使用した研究も進めていくプランを立てている。 データ整理や解析に要する器材やソフトウェアおよび、実験に使用する研究費の割合が増加すると考えられる。
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