研究課題/領域番号 |
16K20072
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
高橋 宏 東邦大学, 医学部, 講師 (80597047)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | compression myelopathy / lumbar canal stenosis / biomarker |
研究実績の概要 |
脊椎変性疾患は、圧迫性脊髄症、神経根症、腰部脊柱管狭窄症など病態が多岐に渡り、合併症例も多く存在し、さらにその病態についても不明な点が多い。一方、脊髄、神経根、馬尾神経における障害パターンを判別する、また組織への障害の程度や治療の効果を反映するバイオマーカーに関する報告はない。本研究の目的は、これら脊椎変性疾患における鑑別診断、障害の程度、神経学的予後の予測、治療効果判定に有用な血清中バイオマーカーとなりうる蛋白を同定することである。これにより、脊椎変性疾患、特に脊髄、神経根、馬尾神経障害の鑑別や、症状増悪の予後予測、および薬物治療や手術による脊髄、神経根、馬尾の回復の程度につき客観的な評価が可能となる。 本年度は、まず、圧迫性脊髄症増悪期症例、圧迫性脊髄症慢性悪化例、腰部脊柱管狭窄症手術例における術前の血清、脳脊髄液検体の採取を行った。また、血清検体については、術後定期経過観察時の採血において採取を行った。 次いで、検討項目のうち、血清中酸化ストレス(ROM)の脊椎変性疾患手術症例における発現量を測定した。今後は、このROMが脊椎変性疾患(脊髄障害、神経根、馬尾神経障害)において、バイオマーカーとして活用し脊髄、神経根障害合併症例における主病態の鑑別や、客観的な治療効果判定、予後予測に有用かどうか、検討を行う予定である。 さらに、以前の研究で圧迫性脊髄症急性増悪期において、脳脊髄液中phosphorylated neurofilament subunit NF-H (pNF-H) の発現が上昇することが解明されており、今後は追加項目として、血清中pNF-Hの値を測定し、同様にバイオマーカーとして有用かどうかを検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検体採取については脊椎変性疾患手術症例に対する血清及び髄液の採取を行っており、概ね順調に進行している。また、血清中酸化ストレス(ROM)値についての測定も開始しており、今後解析予定である。手術後の臨床経過、改善率との相関については、まだ経過観察期間が短いため行えていないが、今後、各症例の経過観察、神経学的評価を重ねることでData集積が可能と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
1. 圧迫性脊髄症増悪期症例、圧迫性脊髄症慢性悪化例、腰部脊柱管狭窄症手術例における術前の血清、脳脊髄液を採取し、血清と脳脊髄液検査の相関、解離につき解析する。 2. プロテオミクスを用いて、採取した血清の全蛋白を抽出し、圧迫性脊髄症急性増悪期症例、圧迫性脊髄症慢性増悪症例、腰部脊柱管狭窄症例の間で有意な変化を示す蛋白を同定する。同定された蛋白については脳脊髄液中の値も測定し、相関について解析する。また、同定された蛋白の術後の経時的変化についても解析する。 3. 臨床症例において、同定された蛋白の発現量の変化を比較検討し、神経学的症状、痛みの程度の変化との相違、手術による改善率などの臨床パラメーターとの関連につき比較検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度はまず、圧迫性脊髄症、腰部脊柱管狭窄症手術症例患者について、同意を得た患者につき血清、脳脊髄液の採取を行う必要がある。この検体採取にある程度の時間を要するため、初年度に行える血清、および脳脊髄液検体の解析には限度がある。このため、本格的な血清および脳脊髄液中蛋白発現の解析は次年度に行うことになるため、次年度使用額が生じる。
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次年度使用額の使用計画 |
過去に代表者が脳脊髄液検査において明らかにした蛋白、及び他の中枢神経変性疾患 (外傷性脳損傷、急性脊髄損傷、筋萎縮性側索硬化症) などにおける報告から関与が疑われる蛋白、サイトカインにつき、血清中の蛋白発現量の解析を行う。これに並行して脳脊髄液中の各種蛋白発現量の解析も行い、血清中発現量と脳脊髄液中発現量の相関、解離についても解析する。また、術後の血清検体についても同様にELISA法を用いて定量化を行い、各種蛋白の経時的変化についても解析する予定である。 なお、脊髄症における血清中酸化ストレス(dROMs)発現量と臨床成績の関連について、日本整形外科学会基礎学術集会に演題登録しており、発表予定である。さらに、解析に必要な消耗品も購入予定である。
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