研究課題
圧迫性頚髄症急性増悪期 (AM) 20例、圧迫性頚髄症慢性悪化例 (CM) 16例に対して、術前の血清中酸化ストレス値の解析を行った。血中酸化ストレスの測定は、血中ジヒドロペルオキシド濃度を呈色反応で測定するROM (Reactive Oxygen Metabolities) test (正常値:300 CARR U以下) を用いて行った。ROM値 (CARR U) はAM群415.7. ± 85.6、CM群359.5 ± 64.2と両群とも中等度以上の酸化ストレス状態であったが、AM群ではCM群に比し有意にROM値は高値であった (p<0.05)。AM群の解析において、ROM値とJOA score改善率に負の相関を認めた。圧迫性脊髄症においては慢性期においても酸化ストレスが存在しているが、急性増悪期に顕著となり、脊髄症急性増悪時に酸化ストレスが強い症例では手術成績が不良となる可能性が示唆された。また、これに並行して、明らかな下肢症状を有する腰椎疾患に対して手術を施行した58例についても、術前の血清中酸化ストレス値の解析をROM値を測定することにより行った。ROM値は376 ± 90.6で、全体としては健常人に比し高値であった。術前筋力低下あり群(29例)では399 ± 95.8、筋力低下なし群(29例)では352 ± 80.2と筋力低下あり群でROM値は有意に高値であった(p<0.05)。神経症状を有する腰椎疾患においては健常人に比し酸化ストレスは高い状態となっていた。筋力低下を認める例では酸化ストレスは特に高値となり、酸化ストレス値は神経障害の重症度を反映する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
血清中酸化ストレスの定量化を行った所、脊椎変性疾患においては上昇傾向を認めることが判明した。圧迫性脊髄症においては、手術成績との関連を認める傾向が解析の結果示唆され、腰椎変性疾患では、神経障害の程度と関連がある傾向が認められ、想定したバイオマーカーとして有用となりうる可能性が示唆され、今後詳細な解析を行うことで研究が順調に進むと考えている。
血清中酸化ストレスの疾患別のサブタイプ解析、および、手術後の経時的な変化につき検討予定である。また、以前に我々の研究で解明された、脊髄症において上昇する脳脊髄液中Phosphorylated neurofilament subunit NF-H (pNF-H) を脊髄症患者の髄液を用いて解析し、血清中酸化ストレスとの関連を解析することでさらなる病態の解明の可能性が見込まれる。また、血清検体を用いて、抗酸化作用を測定することも検討している。
検体採取は随時行っているが、手術後の経時的な変化量はまだ全て測定することはできないため、今後まだ検体の解析が多く必要となるので次年度使用額を残しておく必要がある。また、今年度の計画としては、引き続き酸化ストレス値の解析を行っていく予定であり、そのための費用として、また、国内、国際学会で今後も本研究内容を発表予定であり、そのための旅費として、研究費の使用を予定している。
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Eur Spine J
巻: Epub ahead of print ページ: 印刷中
10.1007/s00586-018-5549-5