研究課題
脊椎変性疾患における血清中バイオマーカーの候補として、酸化ストレス値を測定した。血中酸化ストレスの測定は、血中ジヒドロペルオキシド濃度を呈色反応で測定するROM(Reactive Oxygen Metabolites test; 正常値:300 CARR U以下、340以上で中等度酸化ストレス、400以上で高度酸化ストレスと規定)の手法を用いて行った。圧迫性脊髄症においては、術前(治療前)では慢性期においても血中ROM値は平均340を超え、中等度の酸化ストレス状態となっていたが、急性増悪期には血中ROM値は平均400を超える高度酸化ストレス状態となっており、血中ROM値は、急性増悪期において慢性期に比し有意に高値となっていた。さらに、脊髄症急性増悪例において、血中酸化ストレスと手術成績に負の相関を認め、血中酸化ストレスが強い症例では手術成績が不良となる可能性が示唆された。また、術後3ヵ月においては、予想に反して、血中ROM値は術前の値と比べて低下せず、むしろ上昇するという結果が得られた。さらに、術後C5麻痺症例では神経原性酸化ストレスの影響か、有意に上昇しているという結果であった。また、神経症状を有する腰部脊柱管狭窄症手術症例においても、術前(治療前)では血中d-ROMs値は平均340を超える中等度酸化ストレス状態となっており、特に筋力低下を認める例では酸化ストレスは特に高値となっており、血中酸化ストレスは神経障害の重症度を反映する可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
血清中バイオマーカー候補として、血中酸化ストレス値をROMの手法を用いて測定したところ、圧迫性脊髄症、腰部脊柱管狭窄症の双方において上昇が見られ、バイオマーカーの候補として有用である可能性が示唆された。圧迫性脊髄症においては高ROM値が手術成績不良を予測するバイオマーカーとして有用となりうる可能性が示唆され、腰部脊柱管狭窄症においては術前筋力低下との関連があり、神経障害を反映するバイオマーカーとしての有用性が示唆された。
圧迫性脊髄症、腰部脊柱管狭窄症、それぞれに対して、術後2年までの血中酸化ストレスの経時的変化と手術成績との関連について解析を行う予定である。
術後2年までの経過観察が終了していない症例があるため、その症例に対して血清検体の取得、血中酸化ストレス値の測定が必要である。さらに、解析した結果を国内、国際学会にて発表予定であり、その経費も必要となる見込みであるため。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件)
BMC Musculoskeletal Disorders
巻: 20 ページ: 100
10.1186/s12891-019-2475-6.
BMC Research Notes
巻: 11 ページ: 500
10.1186/s13104-018-3612-2.
European Spine Journal
巻: 27 ページ: 1824-30
10.1007/s00586-018-5549-5.
日本脊髄障害医学会誌
巻: 31 ページ: 178-9