研究実績の概要 |
本研究は変形性膝関節症(膝OA)における前十字靭帯(ACL)変性の病態解明および膝OAの病態への関与を遺伝子およびタンパクレベルで明らかにすることを目的としている。本研究では、ACLの肉眼的な変性度により3群 (正常群、軽度変性群、変性群)に分けて、 RNA-Seqを用いて遺伝子発現差を検討する予定としており、本年度は各群4検体ずつ採取できたため、ACLの半分は病理組織学的評価、残り半分よりRNAを抽出し、Quality Controlを行ったのちにRNA-Sequencingを行った。各群間で遺伝子発現(Differentially Expressed Gene :DEG)解析を行い、発現差のあった遺伝子を用いてACLの変性に強く関与している遺伝子のGO(Gene Ontology)解析及びpathway解析を行った。RNA-Seqの結果、発現量に有意差(|fc|>2 かつraw.p<0.05)認めた遺伝子は769遺伝子であった。また、DEG解析の結果をもとにGO解析を行い、Biological Process(BP), Cellular component(CC), Molecular Function(MF)の3カテゴリーについて評価した。BPについては381項目、CCは46項目、MFは35項目に含まれる遺伝子群の発現を認めた。また、パスウェイ解析では、有意なパスウェイは89個同定され、炎症に関連するパスウェイの活性化を上位に認めた。本研究結果より膝OAにおけるACLは変性度により靭帯自体の遺伝子発現が異なることが確認でき、より変性が強いACLは炎症に関連する遺伝子発現及びパスウェイが活性化されており、軟骨変性同様にACLの変性にも炎症性サイトカインの関与が示唆された。
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