研究課題/領域番号 |
16K20079
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
齋藤 和智 東北大学, 大学病院, 助手 (60770740)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | Kv1.3チャネル / 敗血症 / 腎不全 |
研究実績の概要 |
重症敗血症では腎不全を併発することで、死亡率が上昇する。急性腎不全から慢性腎不全に至り、維持透析が必要となった場合、医療費の増大は計り知れない。本研究では、ラットやマウス敗血症モデルを用いて急性腎不全から慢性腎不全に移行する新たなる病態を解明するとともに、慢性腎不全に進行しない予防治療法の検討を行うことを最終目的とする。 急性腎不全は、敗血症性ショックでの全身臓器低潅流に伴う腎臓低潅流から、糸球体・尿細管細胞の虚血壊死を来たすことに依る。急性腎不全後の腎機能回復例では一過性の腎機能障害を来たした後に、再潅流による腎臓の生存細胞の機能再開や糸球体・尿細管細胞の再生により機能回復を見る。しかし、この後に腎機能が悪化して急性腎不全から慢性腎不全へと進行する症例も多い。詳細な病態解明には、敗血症性ショック後にリンパ球を中心とした炎症反応が腎臓間質でどの様に生じているかの病態解明と、腎尿細管細胞におけるアポトーシスの病態解明が不可欠である。また、リンパ球浸潤と尿細管アポトースに多大な影響を与えるKv1.3チャネルやCaチャネルが本病態へどのように関与しているかの解明も不可欠である。現在、正常マウス胸腺細胞より採取したTリンパ球を用いて、Kv1.3チャネルに対する影響をパッチクランプ法により検討している。非ステロイド性抗炎症薬(ジクロフェナクやサリチル酸など)、カルシウム拮抗薬(ニフェジピンやベニジピンなど)やマクロライド系抗生物質の中には本来の薬理作用に加え、胸腺細胞膜のKv1.3チャネル電流を介した免疫抑制作用を併せ持つことが電気生理学研究により明らかにされているが、我々は第二世代抗ヒスタミン薬(セチリジン、フェキソフェナジン、アゼラスチン、テルフェナジン)を用いて、Kv1.3チャネル電流の抑制と細胞膜容量の測定からこれらの薬剤と細胞膜との相互作用による機序を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リンパ球に数多く存在するKv1.3チャネルに対する第二世代抗ヒスタミン薬の影響を正常マウス胸腺細胞(約4~5週齢)より採取したTリンパ球を用いて、電気生理学的手法であるホールセル・パッチクランプ法により検討した。第二世代抗ヒスタミン薬であるセチリジン、フェキソフェナジン、アゼラスチン、テルフェナジンを用いて、それらがKv1.3チャネル電流と細胞膜容量(membrane capacitance:Cm)に対する影響を比較した。これらの薬剤がTリンパ球に発現したKv1.3チャネル電流を抑制することを初めて示すとともに、アゼラスチンとテルフェナジンが与える影響は、細胞膜容量を減少させることから、薬剤と細胞膜の相互作用によることも併せて示した。
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今後の研究の推進方策 |
各薬剤(非ステロイド性抗炎症薬、カルシウム拮抗薬、抗ヒスタミン薬など)のKv1.3チャネルに与える影響を考察しつつ、これに加えて敗血症性ショックによる腎不全モデルを作成し、このモデルにおけるリンパ球形質膜表面のKv1.3チャネルの発現量と活性の測定を行う。敗血症性ショックによる腎不全モデルの作成は、研究代表者が今まで一貫して敗血症性ショック副腎不全モデルを作成してきたのと同様の手法で、軽度の腎不全ラットにエンドトキシン投与による敗血症を誘発するモデルを作成することで検討可能と考えられる。 また、併せて、ラット腎不全モデル(尿管結紮モデル)に対するKv1.3チャネル阻害剤を用いた腎不全抑制効果に対する検討も加えており、こちらも並行して継続していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 本研究に関する実験結果を英語論文としてまとめ、投稿中ではあるが、その成果を学会等で発表する機会は未だなく、学会参加等に関わる移動経費は計上されず、差額が生じたと考えられる。 (使用計画) 論文の校正費用ならびに掲載雑誌によっては掲載料が必要になる予定である。また、新な研究成果が得られたならば、学会発表を行う際の学会参加費に当てるとともに、ラットやマウス、実験試薬なども追加実験のために必要であり、その購買費用も必要と考えられる。
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