研究実績の概要 |
HUSは腸管出血性大腸菌によって産生排出されるベロ毒素がその病態形成に関与していることが想定されているが,どのように全身の炎症反応を惹起し,HUSを引き起こすかは多くの謎がある.その治療法を開発するにあたって,HUSモデルラットの開発は絶対に必要な過程であるため,前年度に引き続いて実際の臨床と比較してフィッティングの良いモデルの作成を主な目標とした. 昨年度は,ベロ毒素2を腹腔内に1μg/kg投与し生存率を検討したが,生存率としては20%程度のモデルとなったが,血液検査にてHUSによる死亡というよりはむしろ全身の血管透過性上昇からショックをきたして死亡したと考えられる所見であった. 本年は,1回の腹腔内投与ではなく,3回に分割してベロ毒素を腹腔内投与することによって急激な循環動態の変化を来さずにHUSを発症させられないか検討した.一回の注入量を0.1μg, 0.2μg, 0.5μgの3群で検討した.3群とも3日毎に一回注入量0.1μg, 0.2μg, 0.5μgをそれぞれ注入し死亡率を算出した.死亡率としては0.2μg×3回の腹腔内投与が臨床的であった.採血の結果がまだ取れていないので,今後は採血結果においてHUSの特徴である溶血性貧血,破砕赤血球,血小板減少,LDH高値,BUN上昇,クレアチニン値上昇などを確かめていき,組織学的な検討によってHUSの微小血管障害の存在を同定することでモデルとしてよいか検討したい.
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