我々の先行研究で骨髄内神経が痛みの受容に関与していることが明らかとなった。また、関節炎では骨髄内の病変が痛みの強さに強く関わっていることから、骨髄内をターゲットとした鎮痛法が有効である可能性が示唆され、今回の実験を行った。骨髄炎モデル、関節炎モデルラットを作成し行動分析を行ったところ、先行研究と同様に測定部の機械的刺激に対する逃避閾値の低下を認めた。これらのモデルラットに対して骨髄内電気刺激を行えるように骨髄内に電極を留置し、骨髄内刺激に対する痛覚過敏の評価を行った。いずれのラットでも非モデルラットと比べて電気刺激に対する逃避閾値の低下を認め、炎症により骨髄内の神経過敏が引き起こされることが明らかとなった。電気生理学的実験では、関節炎モデルラットを用いて、骨髄ない刺激に応答するニューロンの解析を行った。関節炎モデルラットでは骨髄ない刺激に対し応答するニューロンは自発発火が多い傾向を示し、関節炎により骨髄内に投射するニューロンも発火が更新していることが示された。新たな鎮痛法を開発することを目的として、関節炎モデルラットに対してリドカイン骨髄内投与による行動変化を評価した。リドカインを骨髄内投与したラットでは足底への機械刺激に対する逃避閾値が上昇しており、リドカインの骨髄内投与により関節炎の痛覚過敏が抑制される結果が得られた。これらの結果から、骨髄内神経は骨髄炎・関節炎において痛みの受容に関わっており、鎮痛のターゲットとなりうることが明らかとなった。
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