研究課題/領域番号 |
16K20090
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
植田 広 浜松医科大学, 医学部附属病院, 診療助教 (40748498)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 蛋白結合率 / レミフェンタニル / 人工心肺 |
研究実績の概要 |
薬効は血中で蛋白質に結合していない分画がもたらす。薬剤は血中で一定の割合で蛋白質に結合しており、この割合を蛋白結合率という。蛋白結合率は様々な要因で変化するが、心臓・大血管手術で人工心肺を使用する際も蛋白結合率が変化する。過去、人工心肺中に使用する鎮静薬であるプロポフォールについて、蛋白結合率が低下することが報告されている。心臓外科に限らず、本邦における多くの全身麻酔管理では鎮痛のためにレミフェンタニルの持続静注が用いられる。人工心肺中も用いられているため、蛋白結合率の変化による薬効の増強や減弱の可能性がある。本研究は、人工心肺中のレミフェンタニルの蛋白結合率変化を明らかにすることを目的とした。 人工心肺を使用する心臓・大血管手術を受ける患者を対象として、人工心肺前、使用中、人工心肺後に血液を採取し、各時点におけるレミフェンタニルの蛋白結合率を測定する。採取した血液を遠心分離し、得られた血清を平衡透析することで、蛋白に結合していない薬剤の濃度を測定する。 まずは平衡透析の条件を決定するため、プロポフォールの蛋白結合率を平衡透析を用いて測定し、過去の研究および添付文書に記載された蛋白結合率と照らし合わせた結果、報告された数値と同等の結果が得られた。 次に、レミフェンタニルの蛋白結合率が添付文書と同等であることを確かめるため、人工心肺前の検体を用いて同様に平衡透析を行った。使用するバッファーや透析膜、温度などはプロポフォールの場合と同じ条件とした。その結果、添付文書に記載された蛋白結合率とは大きく解離した数値が得られた。 平衡透析の条件や手技、保存を含めた検体の取り扱いに問題がないか、限外濾過など他の手法で測定した場合はどうかなどを現在検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
「レミフェンタニルの添付文書に書かれている蛋白結合率と同等の測定結果が得られない」
本実験を行う場合、患者の血液を比較的多く採取する必要があるため、平衡透析の手法が正しいことを確認するために予備実験を行った。 まずはプロポフォールについて、過去に発表されている研究と同様の検査を行った。人工心肺前の血中プロポフォール濃度は添付文書と同等であり、人工心肺中においては過去の報告と同等の結果が得られたため、平衡透析の手法は問題なく行えているものと考えた。 そこで次に、レミフェンタニルの蛋白結合率を測定する予備実験を行った。人工心肺前および人工心肺中の血液サンプルから血清を採取し、レミフェンタニルの蛋白結合率を測定した。レミフェンタニルの添付文書に記載されている蛋白結合率と、この予備実験で得られた蛋白結合率に大きな解離が見られた。 現在は、平衡透析条件などを含めた手法に問題がある可能性も考慮し、限外濾過などの方法を試しながら、平衡透析に用いるバッファーの組成、検体の保存方法、保存の際に血液に添加する試薬の内容などを細かく検証している。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、平衡透析に用いるバッファーの組成、検体の保存方法、保存の際に血液に添加する試薬の内容などを細かく調整し、添付文書に記載されている蛋白結合率と同等の結果が得られるかどうかを検証する。 その上で手技上の問題によるものとは考えられない場合、臨床使用中のレミフェンタニルの蛋白結合率が添付文書に記載されている蛋白結合率と本当に同等であるかどうかを検討する。 実臨床で得られたレミフェンタニルの蛋白結合率の測定結果を踏まえて、次に当初予定した人工心肺中のレミフェンタニルの蛋白結合率変化を測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本実験では、一人の患者につき10の時点で採血を行い、それぞれの地点でプロポフォールの濃度・蛋白結合率の測定、レミフェンタニルの濃度・蛋白結合率測定、総蛋白、アルブミン、α1酸性糖蛋白の測定を行うため、多くの検体検査が必要となる。しかしながら、現時点では予備実験の段階にとどまっており、本実験での患者検体測定ができていないため、検体検査にかかる費用が予定よりも極めて少ない状況となっている。
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次年度使用額の使用計画 |
レミフェンタニルの実臨床における蛋白結合率の測定を予備実験として行い、その結果を踏まえて本実験を行う。
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