研究課題
最終年度は、研究対象を肝移植手術から一般の腹部手術に広げて急性腎障害の予測及び予後への影響を調査した。乏尿は古くから腎血流低下とそれに引き続いて起こる腎障害の臨床的サインとして記述され、麻酔・集中治療領域の教科書やガイドラインでは輸液療法をガイドする指標として使用することが推奨されているにもかかわらず、これまで術中乏尿と周術期腎障害の関連を示した研究はなかった。そこで、術後急性腎障害の増加と関連する術中尿量の閾値が存在するという仮説を立て、その閾値を明らかにすることで臨床データに基づいて「術中乏尿」を定義することを試みた。食道・胃・結腸・直腸・膵臓・肝臓の切除を伴う腹部手術を受けた3560症例の成人患者を対象とし、術中の体重時間毎の尿量と術後1週間以内の急性腎障害発症との関係を検討した結果、体重1kgあたり0.3mL/h未満の乏尿を呈した患者では術後急性腎障害の発症が2.6倍多く、体重1kgあたり0.3mL/h未満の乏尿という情報を用いることで患者背景因子と手術因子だけを用いる場合よりも術後急性腎障害発症をより良く予測できる事を明らかにした。一方、体重1kgあたり0.3~0.5mL/hの比較的軽度な乏尿は術後急性腎障害との有意な関連が見られなかった。また、上記研究のデータセットを用いて術後の一過性急性腎障害が長期予後に及ぼす影響の検討も行い、腹部大手術術後の血清クレアチニン値上昇はたとえ一過性であってもその後の長期生存の減少や慢性腎障害の悪化に関連することを明らかにした。
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