研究課題/領域番号 |
16K20097
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
鈴木 聡 岡山大学, 大学病院, 助教 (50444675)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 酸素 / 麻酔 / 周術期 / 人工呼吸 / 分離肺換気 / 観察研究 / 多施設 |
研究実績の概要 |
酸素療法は、組織の低酸素による傷害を予防する、または最小限にとどめるために必須の治療である。一方で、酸素療法に伴う高酸素血症は、酸化ストレス反応を引き起こすなど、生体に有害な作用を有する可能性がある事が報告されている。実際に、心肺蘇生後、心筋梗塞、脳梗塞、慢性閉塞性肺疾患など、様々な患者群において、酸素投与による高酸素血症の発生と予後の悪化の関連が報告されている。本研究では、周術期患者において、酸素療法に伴う高酸素血症の発生と患者への影響という問題点を中心に解析を行い、周術期酸素療法の最適化へと展開する予定である。 今年度は、周術期酸素療法に関する疫学調査のデータ管理、統計解析を中心に研究を進めた。国内43施設、1498人の全身麻酔導入1時間後の投与酸素濃度と経皮的動脈血酸素飽和度に関するデータを解析し、80%以上で高酸素血症が容認されている現状が分かった。さらに、年齢、性別、体重、術前状態分類、緊急手術、分離肺換気中、呼吸器モード、呼気終末陽圧の使用を説明変数として多変量解析を行い、過剰な酸素投与が行われるリスク因子の調査を行ったところ、分離肺換気中において過剰酸素投与に曝されるリスクが12.9倍高まることが分かった。 今回の結果から、全身麻酔中の酸素投与を制限する余地が十分に存在することが分かり、酸素の使用を制限する介入研究の妥当性を示すことができた。次年度以降は、術中(特に分離肺換気中)の経皮的動脈血酸素飽和度のターゲットを従来よりも低めに設定する制限酸素療法を導入し、その安全性、有効性を調査していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
術中高酸素血症の発生に関する疫学調査に関して、学会発表を行った。論文作成も終了し、次年度早々に英文査読雑誌に投稿できる目途がついた。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、単施設で術中の制限酸素療法を導入し、その安全性を評価する予定である。その後、可能であれば多施設での介入研究を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
データの収集、管理に関して、研究協力者のサポートで完遂できたため、外部委託する必要がなくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度からは同意取得や試料採取が必要となる可能性が高く、研究サポートの外部委託や外注検体検査の費用に充てられる。
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