本研究の目的は、全身麻酔中および術後患者において、①医師が実際に投与している酸素濃度と、高酸素血症がどの程度発生しているかの現状調査、②高酸素血症の発生と生理学的変化やバイオマーカーの関連、③高酸素血症の発生と患者予後、術後合併症の発生との関連を明らかにすることである。 ①に関しては、2017年度までに観察研究を終え、全身麻酔中は高酸素血症が高率で発生しており、酸素投与を制限する余地が十分に存在することが分かり、酸素の使用を制限する介入研究を行うことの妥当性を示すことができ、国際学会での発表、英文査読雑誌への投稿を行った。この結果を受けて、2018年度から②、③に関して、介入研究を施行するための準備を進めた。手術患者の中でも特に高酸素血症に曝される機会が多かった呼吸器外科手術の患者に注目し、手術中の酸素化の指標である経皮的動脈血酸素飽和度のターゲットを従来よりも低め(90-94%)に設定し、酸素の使用を厳重に管理する制限酸素療法と、酸素の使用を制限しない従来療法を比較するランダム化比較試験を計画した。 2018年度後半からは、研究支援を依頼した生物統計学者とミーティング重ね、アウトカムや症例数の設定、統計解析の方法などを決定した。また2019年度には、大阪市立大学が管理するREDCapシステムと契約を行い、データ管理システムの構築も行っている。2020年3月に行われた学内の臨床研究審査専門委員会において、最終的な研究プロトコル(整理番号:臨2003-005)が承認を受け、2020年4月から研究開始できる体制が整った(UMIN000039461)。
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