本研究は糖尿病性神経障害性疼痛に対する抑肝散と加味逍遥散の鎮痛効果並びに効果発現部位の検討を目的としている。 ①SDラットにストレプトゾトシンを投与し作製した糖尿病性神経障害性疼痛モデルラット(DMラット)に抑肝散(YKS)と加味逍遥散(KSS)を単回経口投与・継続経口投与し、その抗アロディニア効果の経時的推移を行動学的に評価した(YKSを投与した群:YKS群、KSSを投与した群:KSS群、蒸留水を投与した群:C群)。結果、単回経口投与では、YKS群はC群と比較して有意な抗アロディニア効果を認めた。さらに、YKS群はKSS群より有意な抗アロディニア効果を認めた。継続経口投与では、YKS群・KSS群ともにC群と比較して有意な抗アロディニア効果を認め、継続投与終了まで抗アロディニア効果は継続した。YKS群、KSS群の群間に有意な差は認めなかった。 ②YKSを継続経口投与したDMラットに全身麻酔を施行し、パラホルムアルデヒドで固定した脊髄を切り出して免疫染色を行い、ミクログリアとアストロサイトの活性状態を確認した。結果は現在検討中であるが、ミクログリアはYKS投与前と比較して活性化した細胞が減少している様である。 ③YKSを継続経口投与したDMラットの髄腔内に3つのセロトニン(5-HT)受容体拮抗薬(WAY100635:5-HT1A受容体拮抗薬、Ketanserin:5-HT2A/2C受容体拮抗薬、Ondansetron:5-HT3受容体拮抗薬)を投与すると、すべての5-HT受容体拮抗薬でControlであるDMSOを投与した群と比較して有意に疼痛閾値の低下が認められた。 以上から、YKSとKSSの継続投与は糖尿病性神経障害性疼痛に対し抗アロディニア効果を有する可能性があり、YKSの抗アロディニア効果の発現には脊髄の5-HT受容体の関与が推察された。
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