循環器系をはじめとした様々な臓器障害発症に対する酸化ストレスの関与が注目されている。高侵襲手術後に発生する重大な合併症の一つであり、生命予後にも影響する急性腎障害(acute kidney injury: AKI)の発症にも酸化ストレスの関与が報告されている。 全身麻酔下に腹部手術を受ける成人患者のうち、アメリカ麻酔学会術前状態分類(ASA-PS)がⅠ~Ⅲの者を対象として、麻酔導入前、導入後、手術終了時の各時点で採血し、d-ROMs testおよびBAP testを行い酸化ストレスと抗酸化力を定量評価した。麻酔導入はpropofol、remifentanil、rocuroniumで行い、麻酔維持にはdesflurane、remifentanil、rocuroniumを使用した。術後48時間以内に血清クレアチニン濃度が0.3mg/dL以上上昇したものをAKI群、上昇が認められなかったものをnon-AKI郡とし、術前・術中因子の各項目について比較した。術前因子の中で両群間に有意差を認めたものに関してロジステック回帰分析を行い、術後AKI発症との関連性を評価した。 AKI群では麻酔導入前と導入後のd-ROMs値が有意に高く、酸化ストレスが亢進していることが確認された。手術終了時のd-ROMs値では両群間に有意差はなかった。また、麻酔導入前のd-ROMs値は術後AKI発症の予測因子として有用であると考えられた。 次に糖代謝異常合併患者に人工膵臓を使用した術中血糖管理を行い、なかでも術前d-ROMs値が高値の患者に対して術後AKI発症を抑制でいるかを調査したが、想定通りに患者数が集まらず有意差は確認できなかった。
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