グリコカリックスに対するアルブミンの保護効果の検討として,ラット胸部下行大動脈を用い,虚血再灌流障害モデルとして過酸化水素の暴露を行い,グリコカリックスを障害させた.この暴露処理の結果,血管内皮依存性弛緩反応は減弱することを確認し,その後アルブミン,もしくはセボフルランの存在下での弛緩反応の回復効果を比較検討した.さらに,セボフルランに関しては,血管内皮依存性弛緩反応の回復,蛍光標識したレクチン染色におけるグリコカリックスの保護効果,さらに再生効果を確認した.セボフルランの効果に関しては,過酸化水素暴露処理の前に投与してもその保護効果はみられず,グリコカリックス障害後のセボフルランの後処理でのみ,回復効果が得られた.また,この効果を弛緩反応と同様にラット大動脈を用いた免疫組織化学でも同様に確認し,これらの回復効果の促進因子として,グリコカリックスの重要な構成成分であるシアル酸を付加するシアル酸転移酵素ST6Gal-1に注目し,セボフルランがこの因子に影響を与えていることが示唆された.血管内皮依存性弛緩反応に関しては,ST6Gal-1の阻害薬で,セボフルランの回復効果が消失することも確認した.現在アルブミンでもセボフルランと同等の回復効果があることを仮説に検討中である. これらの結果は,2018年度日本麻酔科学会北海道東北支部会において最優秀演題に選出され,さらにJournal of Surgical Research誌のFeatured Articleとしてacceptされた.また,虚血再灌流障害モデルとしてラットの冠動脈結紮モデルを使用し,電子顕微鏡レベルでアルブミンの保護作用を検討し,2019年度日本麻酔科学会北海道東北支部会に演題投稿予定である.
|