周術期の効率化を推進しながらも安全性を高めて重篤な有害事象を回避することは,現代の術後管理の重要課題である。日本で十分に普及していない PACU (postanesthesia care unit: 麻酔後ケアユニット)で術後患者の全身状態を安定させることが,重篤な有害事象を減らすか否かを検証するために,本研究では症例集積をおこなった。 最終年度までにPACUを運営する8施設と運営しない22施設での症例登録システムを構築することができた。当初の計画とは異なり後方視的な検討とはなったが,術後管理の安全性を向上させる対策としてのPACUの有用性を検証するために症例データを解析中である。また,今後もシステム運営を継続することで,術後の重篤な有害事象の現状を把握し続けることができ,術後管理の安全性を向上させる対策としてPACUは有用なのか否かについての前向き検討が実行可能である。 本研究には,施設背景が異なることや登録数が限られることなどのlimitationがあった。 また本邦では,医療事故への対策のひとつとして近年PACUを開設する施設が着実に増えている。PACUの有用性を検証するために新しい切り口も必要であるという本研究成果に基づいて,最近10年以内および今後PACUを新規開設した(する)施設のPACU開設前後のデータを統合し,術後の重篤な有害事象がPACU開設によって変化するのかを解析する次の研究が計画されている(課題番号:19K18249)。
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