ヒトにおける内在性神経ペプチドであるβエンドルフィンは、主に中枢神経系でオピオイド受容体を介して強力な鎮痛効果を発揮する。これまでに我々は、ホルマリンを足底部に投与した急性痛動物モデルへの脊髄後角における鎮痛作用機序の一つとして、髄腔内へのβエンドルフィン投与により一次求心性線維からの興奮性神経伝達物質であるサブスタンスPの放出抑制を蛍光抗体を用いた免疫学的手法により明らかにしている。 今回、我々はこのサブスタンスP放出抑制の鎮痛メカニズムをさらに解明するため、膜電位イメージングシステム(Brain Vison社)を用いて脊髄後角におけるシナプス伝達に与える影響を、リアルタイムに蛍光高度の変化から膜電位の経時的変化を確認した。 膜電位を蛍光強度に変換する、膜電位感受性色素(di-4-ANEPPS)を滴下し染色した脊髄後根つきスライスを用いて、サブスタンスPの受容体であるニューロキニン1受容体(NK1R)拮抗薬(CP99994)投与における、蛍光高度の変化をCCDカメラ(MiCAM2)を用いた高速蛍光測定法で測定した。 その結果、クレブス液のみ灌流した対照群に比べ、NK1R拮抗薬投与群では脱分極後期相における蛍光強度の低下が認められた。 以上より、βエンドルフィンの鎮痛作用機序の一つとして、膜電位イメージングシステムを用いた脊髄後角におけるサブスタンスP放出抑制における膜電位の変化を、蛍光高度の変化により視覚的に確認することができた。
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