心停止による死亡率は非常に高く世界的に主要な死因の一つである。自動体外式除細動器や蘇生後の低体温療法といった心肺蘇生法の進歩にもかかわらず心停止・心肺蘇生後の予後は未だ不良であり、現在、蘇生後の予後を改善する治療薬は存在しない。申請者はこれまでの研究過程で蘇生後の二酸化炭素吸入が脳血流を増加させることが明らかにしてきたが、二酸化炭素吸入が蘇生後の予後を改善するかは不明であった。一方、動物実験では高二酸化炭素血症が脳虚血に対して保護的に働くことが報告されており、さらに最近の臨床研究において蘇生後に高二酸化炭素血症であった患者は蘇生後12ヵ月後の神経学的予後が良好であったことが示されている。本研究計画は、心肺蘇生後の二酸化炭素吸入による脳血流の増加が蘇生後の予後を改善するとの仮説を検証し、蘇生後の二酸化炭素吸入を新しい治療法として臨床応用が可能であるかを明らかにすることを目的としている。 研究実施計画に基づき、心肺蘇生後の二酸化炭素吸入が蘇生後の生存率に与える影響を明らかにすることを目的として研究を行った。麻酔下にマウスに気管内挿管後、動脈圧、中心静脈ラインを確保し塩化カリウム(KCl)投与により心停止を起こす。8分の心停止後、100%酸素による人工呼吸、エピネフリンの持続投与を開始し胸骨圧迫(約300回/分)を行い蘇生を行った。蘇生後10分後から、10% の二酸化炭素吸入を2時間継続したところ蘇生後10日後の生存率が改善されることが明らかになった。さらに、心肺蘇生後に開始した二酸化炭素の吸入は蘇生後24時間、48時間後の神経障害を改善させることが明らかになった。
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